上野日記

自分が主人公の小さな物語

奥田英朗の『空中ブランコ』を読んだ

奥田英朗の『空中ブランコ』を読んだ。2004年に文藝春秋より刊行された連作短編小説集で「空中ブランコ」、「ハリネズミ」、「義父のヅラ」、「ホットコーナー」、「女流作家」の5編が収録されており、第131回直木賞を受賞した「精神科医 伊良部シリーズ」の第2弾だ。2005年と2011年にはテレビドラマ化、2008年には舞台化、2009年にはアニメ化されている。

以下の概要はAmazonより:

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。

空中ブランコ:突然空中ブランコが失敗するようになったサーカスの曲芸師。自分をキャッチすべき相手のせいだと思っているが、周りのみんなは気づいていた。

ハリネズミ:尖端恐怖症のヤクザ。箸はおろかサンマの尖った頭にも腰を抜かしてしまう。

義父のヅラ:大学講師で附属病院の医師で伊良部とは同級生。妻の父(義父)は医学部学部長でどうしても遠慮して頭が上がらない。無性に義父のかつらを剥ぎ取りたい衝動に駆られる強迫神経症だ。

ホットコーナープロ野球10年目のベテランで三塁手で、突然一塁へまともに送球できなくなった。いわゆるイップスになってしまった。

女流作家:恋愛小説の人気小説化。内容や登場人部の設定が過去の小説に使用したものか気になりなかなか書けなくなり、心因性嘔吐症に悩まされる。


伊良部総合病院の精神科にやっている様々な患者を、突拍子もない方法で治療しようとする。先日読んだ『イン・ザ・プール』に続く第2弾だ。直木賞を取っただけに更に面白くなったような気がする。

患者たちは散々悩んだ末に神経科を受診するのだが、医師の見た目もさながら言動もヤブ医者を連想させる。ただ、時々真面目なことも言う。でも病気は治らない。すったもんだのドタバタの挙げ句出口が見えてくるようだ。


第3弾の『町長選挙』はどうしようかな…。


【2023/08/17追記】先月BSフジで放送されたドラマ(2005年放送、阿部寛主演)の録画を観た。やっぱり面白かった。


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