上野日記

自分が主人公の小さな物語

冲方丁の『天地明察』を読んだ

冲方丁の『天地明察』を読んだ。2009年に角川書店より刊行され、2010年に第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し、第143回直木賞の候補となった時代小説だ。2011年には第4回大学読書人大賞を受賞している。2012年秋には監督・滝田洋二郎、主演・岡田准一宮崎あおいによる映画が公開予定らしい。宮崎あおいの“えん”役はなかなかいいかもしれない。

江戸時代前期の天文暦学者・囲碁棋士神道家である渋川春海(1639-1715)の半生を描いた小説で、日本人の手によって編纂された和暦である大和暦(貞享暦)作成に尽力する話が綴られている。
御城(江戸城)で碁を打ったり教えたりする家に生まれ安井算哲の名を父から譲り受けるが、算術、天文学、暦学に興味が強く惹かれる。このため囲碁に関係しないところでは保井や渋川春海と名乗っていた。22歳の時、幕府の事業で日本各地の緯度を北極星の仰角から計測する任務に抜擢され1年以上をかけて各地を歩き回る。このとき生涯になすべきことを心に決める。それから23年間、色々な人と出会いそして助けられ、研鑽を積み、挫折を繰り返し、新しい暦作りに挑む。


色々な人の思いを胸に一生懸命に暦作りに挑む姿を読んでいて羨ましく思った。周りの人からの助言や手助け、そしてちょっと気の強い女性の励ましは春海に勇気を与えてくれたのだろう。それ以前に彼の人柄も人を魅了する要因の一つだったのかもしれない。さすがに各賞を受賞するだけあって、実に面白かった。

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