貴志祐介の『青の炎』を読んだ。1999年に角川書店より刊行された長編ミステリー小説だ。犯人がわかっているからどちらかというとサスペンス小説だろうか。2000年の第13回山本周五郎賞の候補になった。2003年には二宮和也・松浦亜弥による映画化もされおり、蜷川幸雄の19年ぶりの監督・演出で話題になったらしいが記憶にない。
高校2年生17歳の主人公の少年が、10年前に離婚したのにちょっと前から家に住みついた大酒飲みの元養父の完全犯罪を計画し実行する。少年は緻密に計画し実験・試行を繰り返し犯行は完璧に思われたが、思いがけないことからぼろが出る。元養父の悪態に怒りの炎は赤からさらにもっと高温の青い炎に変わり怒りは頂点に達するなど、少年の心理描写が絶妙に描かれている。そして、読み終えてとても切ない気持になった。
小説の舞台は湘南で、少年は自宅の鵠沼と由比ヶ浜近くにある高校の間の国道134号線をロードバイクで通学している。20数年前からこのコースを私もロードバイクで走っており、江ノ島、稲村ヶ崎、七里ヶ浜の海岸線コースは自転車で走るととても気持ちがよい。その情景描写を読んでいると自分が走っている情景と重なりそれも印象深かった。