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上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の『ラプラスの魔女』を読んだ

東野圭吾の『ラプラスの魔女』を読んだ。2015年にKADOKAWAより刊行された長編ミステリー小説だ。図書館に予約したのが5月、ようやく読むことができた。

以下の概要はAmazonより:

円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な《力》が備わっているのではと、疑いはじめる。
 同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた地球化学の研究者・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する――。
 価値観をくつがえされる衝撃。物語に翻弄される興奮。
 作家デビュー30年、80作目の到達点。

 これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった。
 そしたらこんな作品ができました。 ――東野圭吾

フランスの数学者ラプラスが立てた仮説「もし、この世に存在するすべての原子の現在位置と運動量を把握する知性が存在するならば、その存在は、物理学を用いることでこれらの原子の時間的変化を計算することができるだろうから、未来の状態がどうなるかを完全に予知できる」があり、後年ラプラスの悪魔と呼ばれるようになった。というのが話の要素になっている。
硫化水素事故で植物人間状態になった少年に対し脳手術を施したら、不思議な能力が備わった。つまり、現象を何度か観察し、物理特性を理解し、結果を予測できるようになったのだ。また、手術の執刀医の娘に対しても施術(再現性の確認)し、同じ不思議な能力が備わった。
二つの温泉地で起きた硫化水素事故の調査を依頼されて大学教授が不思議な少女と出会う。所轄の刑事は温泉地の硫化水素事故に事件性を疑う。二つの事故から関連する人物を辿るとある映画監督が浮かぶ。彼の長女が硫化水素自殺をし、妻(死亡)と長男(植物人間状態)が巻き添えとなった事故が8年前に発生していた。事件のカギを握る少年の行方と、その少年を探す少女、謎を究明したい教授と刑事、不思議な力を知られたくない研究者と国家権力者たち…。意外な展開(話の途中でなんとなく先が読めたが)と意外な結末。SFっぽさを含ませたストーリー展開は面白かったのだが、他の作品に比べて人間ドラマというか泣かせる要素が少し足りなかったように感じたのは残念だ。

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