上野日記

自分が主人公の小さな物語

重松清の『青い鳥』を読んだ

重松清の『青い鳥』を読んだ。2007年に新潮社より刊行された連作短編集だ。「ハンカチ」「ひむりーる独唱」「おまもり」「青い鳥」「静かな楽隊」「拝啓ねずみ大王さま」「進路は北へ」「カッコウの卵」の8編が収録されており、いずれにも国語教師の村内先生が登場する。2008年には阿部寛主演で表題作の「青い鳥」が映画化された。

そして8月5日放送の映画「青い鳥」を観た。原作とは少し違っていたが、こちらもなかなかよかった。
吃音症で「カ」行と「タ」行と濁音で始まる言葉が苦手な中学の臨時講師が色んなことで悩む中学生の心のよりどころになる。以前に読んだ『きよしこ』を思い出したが、あとがきによると吃音症の主人公はこれが2作目らしい。
「先生はうまくしゃべれないから〈たいせつなこと〉しか言わない」、「先生の一番大切な仕事はそばにいること、一人ぼっちじゃないと伝えること」と、なかなかグッときた。

ハンカチ:小学生の頃は明るかった少女が中学1年の時のある出来事がきっかけで、人前で話せなくなった。それから3年の卒業間近まで語りかけるのは握りしめたハンカチだけだった。そして卒業式には出たくない村内先生に打ち明ける。
ひむりーる独唱:担任をナイフで刺した中2の少年。数カ月の保護観察で同じ中学に戻ったが、同級生は怖がって近寄らない。
おまもり:12年前に父親が死亡事故を起こしてしまった中2の少女。自転車事故に遭った同級生のお見舞いにいって、逃げた加害者を「犯人」というその同級生に違和感を持つ。
青い鳥:クラス中でいじめをした少年が自殺未遂をして転校していった。村内先生は転校した少年の机をクラスに戻し、毎朝「おはよう、野口君」と声を掛ける。これは「罰」ではない、「責任」だと諭す。
静かな楽隊:クラスを仕切る少女。その少女と小学の頃から友だった少女は、スポーツも音楽も苦手だった。小学の頃の音楽会でカスタネットがうまく叩けなかったことが蘇る。
拝啓ねずみ大王さま父親が電車に飛び込んで自殺をした。それから電車に乗ることができず、私立の中学から近くの公立に転校した。授業のレベルの低いクラスのみんなとなじむことができない。クラス対抗の駅伝はイタズラ電話で中止に追い込んだ。こんどはこの中学伝統の「ムカデ競走」が始まり、練習も消極的だ。

進路は北へ: 私立中の女子生徒、エスカレータ式に高校に行くことを嫌う。そんな折、村内先生から「教室の黒板はどっち向きか?」と問われる。その真意は…。

カッコウの卵:両親の離婚や虐待を受けて家庭を知らずに育った少年。中学を卒業してから7年が経っていた。仕事帰りに村内先生を見かけどうしても会いたいと近くの中学を訪ねるが、不審者扱いにされる。あのとき村内先生に会わなければ今の自分はいないと、「恩師」として慕う彼。7年ぶりに会った村内先生は昔と変わらなかった。

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