上野日記

自分が主人公の小さな物語

夏川草介の『神様のカルテ』を読んだ。

夏川草介の『神様のカルテ』を読んだ。2009年に小学館から刊行された小説だ。2008年に第10回小学館文庫小説賞を受賞したデビュー作で、2010年に本屋大賞で2位となった。2011年には櫻井翔宮崎あおい主演の映画が公開された。

映画化で話題になっていたこと、新聞の広告で宣伝されていたこともあり、いつか読みたいと思っていた本だ。図書館の返却キャビネ(返却処理が終わり書架に戻される直前のキャスター付きの3段キャビネ)で発見して即借りてきた。
信州の病院に勤務する5年目の内科医が主人公。夏目漱石を尊敬し『草枕』を暗唱しているだけあって、古風な喋る方をするので変人と思われている(読んでいて違和感を覚え、読むのをやめようかと思ったほど変な感じだった)。内科医の彼が専門外の救命救急の対応もしなくてはならない。医療現場の問題提起や、癌患の死を目前にした患者との対応などを通して奮闘する姿を描いている。病院では患者や上司・同僚・看護師からは返事と思われつつも好かれ。アパートでは気の置けない飲み友達と飲んだり騒いだり心配し合ったり、そして可愛い奥さんとの羨ましいようなアツアツな関係。患者さんが亡くなるともっとやれることがあったんじゃないかと悔やむこともあるが、それでも延命治療の是非を真剣に考える。
泣けた。

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