渡辺淳一の『弧舟』を読んだ。2010年に集英社より刊行された長編小説だ。先日読んだ藤原和博の『坂の上の坂』で紹介されていたので読んでみた。
大手企業の役員を務めた主人公は、定年後は妻と楽しくのんびりした第2の人生を考えていた。しかし、いざそうなってみると、趣味もない彼は毎日やることもなく、そうかといって家事を手伝うこともなく妻に頼る日々となった。妻としては夫が毎日いることで今までの生活のリズムが狂い不満を抱いていた。いわゆる「主人在宅ストレス症候群」だ。
子供たちは大学を卒業し既に就職している。息子は会社の寮、娘は同居していたが些細なことで喧嘩をし、家を出ていたった。妻としても夫の日頃の態度が癪に障り、娘のマンションに転がり込むことになる。主人公は、寂しさに耐えきれず、デートクラブの女性と食事をして寂しさを紛らわせる。そして……。
夫婦関係や親子関係がぎくしゃくしながらも、自分の気持ちの切り替えでなんとか危機を乗り越えられた。それにしても、小説とは分かりつつも、主人公の妻に対する態度は少し考えものだと読んでいて多少イライラさせられた。ただ、第2の人生を楽しく過ごすには「自分を変える」必要があるのかもしれない。