上野日記

自分が主人公の小さな物語

竹田真砂子の『あとより恋の責めくれば 御家人南畝先生』を読んだ

竹田真砂子の『あとより恋の責めくれば 御家人南畝先生』を読んだ。2010年に集英社より刊行された時代小説で、「第30回新田次郎文学賞」を受賞したというニュースを見て早速借りてきた。

竹田真砂子という名は知らなかったので受賞のニュースを見て新人かと思っていた。本を借りてから調べてみたら1938年生まれと知りちょっと驚いてしまった。
時代は江戸中期(1780年頃)で、実在した大田南畝(本名大田直次郎)という武士であり狂歌の先生を題材にした物語で、江戸庶民との付き合いや遊女との恋の話が綴られている。
南畝の性格を以下のように表現していた。

外側だけを見れば陽気な酒飲みだが、たった今決断したばかりの事柄を人知れず心の中で反芻して、ああしたほうがよかったのではないか、いや、こうしたほうが上策ではなかったか、などと悩み、その悩みを他人には悟られたくなくて、磊落そうに取り繕ったりしている。だから、いつだって心が晴れやかになった例はない。

自分のことを言われているようで、思わず笑ってしまった。

吉原の遊女の身の上や病弱なことを知り家族に内緒で身受けする。甲斐甲斐しく看病を続ける。真実の恋なのかもしれない……。最後の一行には思わずにやりとしてしまった。

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