上野日記

自分が主人公の小さな物語

向井万起男の『君について行こう 女房は宇宙をめざした』を読んだ

向井万起男の『君について行こう 女房は宇宙をめざした』を読んだ。1995年に講談社より刊行された書籍(ドキュメンタリーというかエッセイというか…)だ。

毎週楽しみにしているアニメ『宇宙兄弟』の元となった本だというのを先日テレビで知った。『宇宙兄弟』が日曜の朝から土曜の夕方に変更になるというので特番をやっている中で紹介されていた。これは是非読まなければと思い図書館で借りてきた。
著者は日本人初の女性宇宙飛行士向井千秋さんの夫で医師の向井万起男氏だ。しかも『宇宙兄弟』の登場人物である茄子田理事長のモデルでもある。何度かテレビで見たことはあったが、特番でそれを紹介され思わず笑ってしまった。
本書は二つのパートに分かれており、前半は千秋さんとの馴れ初めから結婚、千秋さんの生い立ちや性格、宇宙飛行士の試験などが書いてある。後半はスペースシャトルの発射45日前からの毎日の状況(日々の訓練や生活)が書かれている。
巧みな文章とユーモアあふれる内容に思わず笑っていしまった。

宇宙兄弟』と比較すると以下のようなエピソードが取り込まれているようだ。他にもあるかもしれない。

  • 伊東せりかの大食いは向井千秋さんがモデルのようだ。千秋さんはかなりの大食いらしい。母親の躾で弟や妹も大食いらしい。大食いタレントのギャル曽根を思い出してしまった。あと医者をめざした理由とか。
  • 天文学者の金子・シャロンおばちゃんは千秋さんの女子高時代の家庭科教諭・高比良信(たかひらしん)さんがモデルではないだろうか。高2から医学部卒業まで自分の家に千秋さんを下宿させ、可愛がってくれたそうな。
  • グリーン・カード。アニメでは閉鎖ボックスでの課題だったが、実際には実験の予行演習などで、仕掛け人から不測の事態を告げられそれに対応するような訓練を行ったらしい。
  • JAXA(NASDA)が発表した合格者の男女の人数で、女性はひとりだったので氏名の発表前に千秋さんが合格したことが分かってしまったこと。アニメでは発表人数で六太とケンジのどちらかが落選しているとお互いに思ってしまうシーンがあった。
  • 南波日々人がフロリダに向かうとき、小型ジェット機でヒューストンの上空を編隊飛行で通過するシーン、兄の六太はそれを見て感動する。万起男氏は千秋さんが乗ったジェット機を見て涙ぐんだらしい。
  • 打ち上げ当日の天候で打ち上げの確率が60%だった。でも打ち上げ当日は晴天になった。
  • スペースシャトル発射、直系家族は特別に打ち上げ管制センターの屋上で見ることができる。発射台まで5Kmの位置だ。ロケットの炎と白煙が見えてから数秒後、ものすごい轟音と共にビル全体が激しく揺れた。

二人が初めて出会って19年、代々木駅で鉢合わせして13年、千秋さんが宇宙飛行士に応募して11年、宇宙飛行士に選ばれて9年、結婚して8年、宇宙飛行の乗組員に選ばれて2年が経っていた。そして、二人の仲の良さと夫婦愛は十分伝わった。

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