上野日記

自分が主人公の小さな物語

辻村深月の『ツナグ』を読んだ

辻村深月の『ツナグ』を読んだ。2010年に新潮社より刊行され、2011年に第32回吉川英治文学新人賞を受賞した連作短編小説だ。2012年には松坂桃李樹木希林出演による映画が公開された。テレビで話題になっていたのでいつか読みたいと思っていた本だ。古本屋で文庫本を見つけ、ためらわずに買ってきた。

生きた人間と死んだ人間を合わせる窓口役が使者(ツナグ)だ。高校生の少年は祖母からその不思議な力を受け継ぐことになった。
「アイドルの心得」「長男の心得」「親友の心得」「待ち人の心得」そして「使者の心得」の5編からなる。最初の4編が依頼者側からの目線で語られ、最後の1編が使者側の目線で語られている。
それぞれの登場人物が悩みを持ち死者(アイドル、母親、親友、婚約者)に会いたいと願い使者に連絡を取り、満月の夜に再会する。そして生きる希望を貰う者もいれば、はげしい悔恨に苛まれるものもいる。
使者を継ぐ少年にも逢いたい人がいた。物心がつく前に死んだ両親だ。母親を殺し自殺した父親。何故そんなことをしたのかあって理由を聞きたい。生前に一度だけ、死後に一度だけしか会えない。母親に会うべきか、父親に会うべきか、悩む。秘密を知る祖母はどうなのか…。
もし使者(ツナグ)がいたら、自分はどうするか。考えさせられる作品だった。

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