上野日記

自分が主人公の小さな物語

フランツ・カフカの『絶望名人カフカの人生論』を読んだ

フランツ・カフカ頭木弘樹編訳の『絶望名人カフカの人生論』を読んだ。2011年に飛鳥新社より刊行された書籍で、フランツ・カフカの名言とその解説で構成されている。

カフカの『変身』を読んだのは昨年9月だったが、残念ながらよく理解できなかった。今年5月にNHK Eテレの番組「100分de名著(MC:伊集院光)」でカフカの『変身』が4回連続で取り上げられ、何となく理解できたような気になった。本書はその番組の中で紹介されていたものだ。編訳者の頭木氏も登場していた。それから図書館に予約し漸く読むことができた。
カフカの小説ばかりではなく、父親・婚約者・友人に送った手紙や日記からカフカならではの絶望的な86の言葉が引用され、それぞれの言葉に頭木氏による解説が添えられた構成になっている。〈誰よりも落ち込み、誰よりも弱音をはき、誰よりも前に進もうとしなかった人間の言葉。今までになかった“絶望の名言集”〉と。
本書を読んで、自分もカフカの考えに近いことに気がついた。どちらかというとネガティブ思考だ。失敗したことにくよくよ悩んでしまう。その失敗を踏み台にして次のステップに進めない。〈将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。/将来にむかってつまずくこと、これはできます。/いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。〉と。
成功者の前向きな言葉には勇気を貰うことができるが、自分に当てはめるには手が届きそうにない。時にはこのような絶望的で後ろ向きな言葉も逆に力が湧いてくるような感じがしたのは少し不思議だ。編訳者の頭木氏の解説がよかったからかもしれない。

『変身』を読んだ時カフカの小説はもう二度と読まないと書いたが、考え直してみようかな。

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