上野日記

自分が主人公の小さな物語

伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を読んだ

伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を読んだ。2007年に新潮社より刊行され、2008年に本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞した書き下ろしの長編小説で、2010年には堺雅人竹内結子出演による映画が公開された。

仙台市で爆弾を積んだリモコンのヘリコプターで凱旋パレード中の首相が暗殺される事件が発生した。主人公の青年は暗殺犯の濡れ衣を着せられ逃亡する。事件の裏には巨大な力が働いておりとても太刀打ちできないが、学生時代の友達や思わぬ協力者の力で逃亡を続ける。そして……。
アメリカ大統領のケネディー暗殺がモチーフとなっている。そしてビートルズの「Golden Slumbers」も。過去のエピソード共に色々な伏線がはられ、ちょっと現実的にはありえない展開も面白い。学生時代の友達の思い、親の思い、同僚の思いが主人公の唯一の心の支えとなる。最後には涙してしまった。

図書館をウロウロしていたらこの本が目についた。伊坂幸太郎の本は人気があるのでなかなか借りられないのだが、本棚にあるのを見て思わず驚き、速攻で借りてきた。実は次は『フィッシュストーリー』を読みたいと思っていたので、この本は予定に入れていなかった。でも読んで正解だった。

もちろん映画版は観たことがなかった。Wikipediaによると「2011年3月12日にフジテレビで地上波初放送される予定だったが、前日の3月11日に本作の舞台である東北地方で東北地方太平洋沖地震が起こった影響で休止となった」らしい。ところが、なんと先日(8/6)にケーブルテレビで放送され録画していたのをさっき観た。

映画版はいろんな所がカットされていたり、バックグラウンドの説明が希薄だったり、設定が変更されていたり、でちょっと違和感があった。ま、これは映像化では仕方ない。ただ、役者一人ひとりの科白が次のあのシーンに関連していると思うと一人で感動して涙があふれてしまった。やっぱり原作を読んでいて正解だったかもしれない。

作者は、大学のサークル仲間だった4人とビートルズの4人を重ね合わせていたのだろうか。ビートルズは仲たがいをして解散してしまったが、「Golden Slumbers」が収録されているメドレーはポールが一所懸命に繋げたと語る。大学卒業後4人はバラバラになってしまったが、彼らの絆は固く結ばれていたのかもしれない。

こういう小説を読むと学生時代の奴らはどうしているのだろうか、とふと考えてしまう。

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