上野日記

自分が主人公の小さな物語

村上春樹の『風の歌を聴け』を読んだ

村上春樹の『風の歌を聴け』を読んだ。こちらも正確には「読み返した」だ。

ノルウェイの森』を読んだので、じゃ折角だから『ダンス・ダンス・ダンス』を読んでみるかと本棚の奥から引っ張り出し裏表紙の説明を読んでみた。「『羊をめぐる冒険』から四年、……「僕」の新しい冒険が始まる」とある。あれ、続編だっけと思い『羊をめぐる冒険』の裏表紙を見ると「村上春樹の青春三部作完結編」とある。あーなるほど、ということで『風の歌を聴け』を読みだした。『ノルウェイの森』同様内容はすっかり忘れている。<鼠>や<羊男>をかすかに記憶しているだけだった。
「僕」が大学生の頃、帰省して友人とビールを飲み、小指のない見知らぬ女の子と仲良くなる。それだけの話のような気がする。三人目に付き合った女性が自殺し、話の合間にラジオのDJができてきたり、米国の小説家「デレク・ハートフィールド」の引用があったり、「あとがきにかえて」にはそのハートフィールドの墓を訪ねて米国を訪れたりと不思議な感じのする小説だ。最初読んだときはこの辺の感覚がつかめなかったのかも入れない。しかも、ネットで検索したらこの「デレク・ハートフィールド」は架空の小説家らしく、まことしやかに登場していることに驚いた。

<鼠>が書いている小説を「あい変わらず彼に小説にはセックス・シーンはなく、登場人物は誰一人死なない」と評しており、良いのか悪いのかは言及していない。「僕」が読んでいる小説には良く出てくるのだろう。また、村上春樹自信の小説にも出てくる。書かないといけないと思っているの、書かなくて済むのなら書きたくないと思っているのかは私にはわからない。

NHKで「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」が放送されていた頃、飲みに行くとよくこの番組の話をした。あんなプロジェクトをやりたいよね、と。そのころSELinux*1に関連したプロジェクトに就いていた。まだ、SELinuxの黎明期で、日本では一部の研究者を除きあまり知られていなかった。

酒の席では、「プロジェクトX」でドラマ化するには誰か死なないといけないよね*2、と私が言うと、みんな笑って同意してくれた。そして、決まって「死に役」は一番年上の私だった。ちゃんちゃん。

*1:Security-Enhanced Linux:米国家安全保障局が開発したLinuxのセキュリティ強化版

*2:H2ロケット開発中での事故での死等涙を誘った。それに奮起してプロジェクトが成功する

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