上野日記

自分が主人公の小さな物語

川上弘美の『蛇を踏む』を読んだ

川上弘美の『蛇を踏む』を読んだ。1996年に文藝春秋より刊行され、第115回芥川龍之介賞を受賞した短編小説である。他に「消える」と「惜夜記(あたらよき)」が収録されている。

蛇を踏む:公園の藪で蛇を踏んだ女性、その蛇は女になり「あなたのお母さんよ」と部屋に住みつき食事などの世話をする。蛇は女性の精神的な闇を表しているのだろうか。
消える:ある日突然長兄が消えた。曽祖母も過去に一年だけ消えたことがあった。「消える家系」だった。長兄は結婚が控えていたが相手の女性は「縮む家系」だった。それぞれの家系は風習や習慣が異なり、それぞれの家族が戸惑う。現代社会のひずみのようなものだろうか。

惜夜記:19章の掌編からなる不思議な話だ。よくわからない…w。


どうも純文学は苦手だ。主題を何かに喩えたり「作者の主張」が隠れていたりするのだろうが、それを理解するのがとても苦手だ。「あとがき」に

ほんとうにあったことではないこと、自分の頭の中であれこれ想像して考えたことなら、いくらでもつるつると出てくるのですが。自分の書く小説を、わたしはひそかに「うそばなし」と呼んでいます。

と書いてある。ドキュメンタリや私小説でない限りほとんどの小説が「うそばなし」だろうが、やはり想像力がないとその「うそばなし」も書けないだろうなぁ。

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