上野日記

自分が主人公の小さな物語

桜も紅葉するんだ

戸塚区の図書館に行ったら設備工事のため休館していた。なんだよ、WEBで調べていったのにそんなこと書いてなかったぞ、と思いながら引き返した。
戸塚駅の西口は再開発が進み「トツカーナ」や「サクラス」といったきれいなビルが立ち並んだ。トツカーナのオープン当時は通路の屋根やタクシー乗り場・バスセンター、一部階段の工事が完了してなかったが、さすがにそれから半年が過ぎたのでもうすっかりきれいになっている。平日の昼間でも人出は多いようだ。昼飯でも食べようかと思ったが、ちょうど昼時で人も多かったのであきらめてダイエーで買い物をして帰ることにした。


空は厚い雲に覆われてどんよりしている。旧東海道を歩き柏尾川に差し掛かった。ふと川岸を見ると紅葉がとてもきれいだ。桜の木だった。そうか、桜も紅葉するんだと思い写真を撮った。毎年見ていたような気がするが、その時は気付かなかったか、こころに残らなかったか、きっと忙しかったからに違いない。桜の花はあれほど気にとめているのに、その葉が散る間際は知らないふりをしていた自分がいた。そう、余裕がなかったのかもしれない。

柏尾川沿いを歩きながら、子どもの頃桜ってあまり見なかったような、とふと思った。実家の庭には葡萄・梨・夏蜜柑・柿・梅・松・ツツジが植えてあった。垣根の植物はなんだったろう。斜向かいの文政神社には大きな銀杏の木だ。入学・卒業といえば「桜」だが、小・中・高と見た記憶がない。小学校の頃遠足で「桜ケ丘(だったか不明)」というようなところに行ったような気がする。

桜を初めて意識したのは大学入学の時だったと思う。記憶が残っていると言ったほうが適切かもしれない。大学入り口からのゆるやかな上り坂が山を切り開いて作られたキャンパスまで200mほど続き、その道に桜が植えてある。入学式だったと思う、桜の花が満開だった。とてもきれいだった。親元を離れ初めての一人暮らしと新しい生活にちゃんとやっていけるだろうか、友達はできるだろうか、と不安の方が多かったかもしれない。そんなときに見た桜だったのでとても記憶に残っているのだろう。

その話をしたのは、地元に帰って成人式に出席した日だった。式が終わるとそのままとんぼ返りした私は、帰りの電車(有佐から熊本間)に同級生(幼馴染の文明ちゃん、中2のとき同じクラスだった女子、あともう一人は思い出せない)と同じ席になり、大学で見た桜の話をした。季節は冬だったのに桜の話をした。みんなどう思っただろう……

大学卒業後、横浜で生活をするようになり、桜の木はあちこちで見かけるようになった。春には桜が咲くというのはもう当たり前のことで、それに慣れてしまっていたのかもしれない。だから、桜の葉が秋には紅くなることに気が付かない自分がいたのかもしれない。

桜の満開がちょっと過ぎると風もないのに花びらがヒラヒラと舞い降りる。その下を歩く。散った桜の花が風で舞い上がる中を自転車で走る。紅くなった桜の葉を見てふとそんなことを思った一日であった。

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