上野日記

自分が主人公の小さな物語

池井戸潤の『アキラとあきら』を読んだ

池井戸潤の『アキラとあきら』を読んだ。2017年5月に徳間文庫より刊行された長編小説だ。最初は2006年から2009年にかけて『問題小説』に連載されたもので、ファンの間では「幻の長編」と呼ばれていたいらしい。7月からWOWOWでドラマ(向井理斎藤工のダブル主演)が放送されるが、藁市の環境では観られないのでとても残念だ。

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以下の概要は裏表紙より:

零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向かうふたりのアキラの、人生を賭した戦いが始まった―。感動の青春巨篇。文庫オリジナル。

この概要と池井戸潤作品ということで、内容を想像した。〈それぞれの息子たちは二代目社長となり、自分たちの仕事関連で対決する。御曹司の方が意地悪を仕掛け、零細工場が窮地に立たされるも、倍返しで御曹司をやっつける〉というパターンだ。

読み進めると全然違っていた。零細工場は倒産し、夜逃げ同然で母親の実家に逃げ込む。なかなか貧乏からは脱せない。御曹司の方も父親の仕事が窮地に追い込まれるも何とか回復する。どちらのアキラも苦労している父親の背中を見て育つ。

二人とも東大を卒業し、銀行に入行する。1/3程度読んだところで「あっ、銀行モノだったのか」とようやく理解する。

「金は人のために貸せ。金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる」という融資部長の教えと、子供の頃の苦い経験から、倒産しそうな会社に何とか融資できなかと必死で策を考え、稟議書を作成する。

紆余曲折あり、海運会社の窮地を救うために銀行を辞め、社長になった彬は会社の回復を模索し、苦労する。このままでは倒産は間違いない。その会社を必死で救おうとする瑛、解決策はあるのか、打開策も次々に頓挫する…。と、物語が佳境に入ると、断然面白くなってきた。池井戸潤っぽさが満載だ。なかなか面白かった。テレビドラマを観たくなった。



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