上野日記

自分が主人公の小さな物語

馳星周の『少年と犬』を読んだ

馳星周の『少年と犬』を読んだ。2020年に文藝春秋より刊行され、第163回直木賞を受賞した連作短編小説だ。「男と犬」、「泥棒と犬」、「夫婦と犬」、「娼婦と犬」、「老人と犬」、「少年と犬」の6編が収録されている。

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以下の概要はAmazonより:

家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の守り神になった―男と犬。仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指す―泥棒と犬。壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた―夫婦と犬。体を売って男に貢ぐ女。どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬だった―娼婦と犬。老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやってきた―老人と犬。震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだ―少年と犬。犬を愛する人に贈る感涙作。

その犬は岩手県東日本大震災に遭い、迷い犬となった。さまよう途中でいろいろと訳ありの人物と出会う。そして、何故か南(途中から西)を気にし、そちらを目指したいようだと拾い主は悟る。体に埋められているマイクロチップから名前「多聞(たもん)」や飼い主の情報(岩手県釜石市)がわかるが連絡は取れない。広い主はその犬の賢さにすぐに気づき、疲れた心が和らいでいくが、悲しい結末が待っていた。

【以下、ちょっとネタバレ】
最終話の「少年と犬」では、約5年を熊本にたどり着いていた。そしてそこには岩手県で被災した夫婦と少年が暮らしていた。そして、少年と犬の関係は・・・。さらに、まさかの結末・・・。

さすが、直木賞を取るだけの作品で、各話の結末は衝撃的だったが、なかなか良かった。




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