上野日記

自分が主人公の小さな物語

湊かなえの『白ゆき姫殺人事件』を読んだ

湊かなえの『白ゆき姫殺人事件』を読んだ。2012年に集英社より刊行された長編ミステリー小説で、2014年に井上真央主演で映画化がされた。先日テレビでその映画が放送されたので原作を読んでみた。

以下の概要は裏表紙より:

化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。人人への聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。傑作長編ミステリー。

美人OL殺害事件と同時に失踪した同僚(主人公)は、関係者や周辺人物の憶測や噂話から容疑者扱いされる。ネット(SNS)では実名や出身校も晒されてしまう。主人公の学生時代のエピソードは負のイメージへとメディアがミスリードする。今時のメディア・ネット社会を象徴しているかのようだ。
物語は五つの章で構成されており、それぞれ同僚だったり同級生や地元の人々だったりの独白形式で物語が進み、週刊誌は悪意をもってそれを報道する。。いきなり「話し口調」で始まり読みづらくイラついたが、後半からの展開はなかなか面白く引き込まれていった。
まずは、ミステリーだからこの容疑者は真犯人ではない。すると犯人は誰なのかと考えながら読み進めても全く見当もつかない。推理小説ではないのでたぶんヒントもない(私が気づかなかっただけか…)。真実と嘘と憶測が入り交じり翻弄される。なかなか面白かった。

読了後映画を観た。原作にある程度忠実に作られていたが、原作にないプラスアルファ、特にラストシーンはなかなかよかった。本書(文庫本)の解説はこの映画の監督が書いていて映画を観てから読んだのだが、そのラストシーンについても触れており監督として思いれのある場面だったようだ。

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