上野日記

自分が主人公の小さな物語

「梶田隆章さんから 科学をめざす君たちへ」に行ってきた

ノーベル賞受賞記念イベント「梶田隆章さんから 科学をめざす君たちへ」」に行ってきた。

朝日新聞のお知らせ記事を見つけ応募したら当選し参加証が郵送されてきた。この手のイベントには時々応募するも毎回落選していたので郵便受けに葉書を見つけたときはとてもうれしかった。

尚、配布資料がなかったので、以下は講演中に書き留めた内容である。抜けている部分や私自身の誤解もかなりあるのであらかじめ了承願う。

あいさつ

朝日新聞社ブランド推進本部 本部長 石田一郎 氏

今日のイベントは若い気持ちを持ったイベントである。ニュートリノ振動の意味とは何か、苦しみや辛かったことの話を聞かせてくれるはず。
過去にも多くの先生方に講演を依頼している。ノーベル賞の前に朝日賞を受賞されている先生ばかりだ。協力いただいた会社に感謝する。

第1部 ニュートリノ 小さな大発見


上記は会場に展示されていた「光電子倍増管」である。

電子から電荷を取る。重さもあまりない。地球を何個も重ねても止められない。地球1万個が必要。ごくまれに物質とぶつかる。これが先生の研究である。
3種類のニュートリノクォークレプトン
宇宙線がつくるニュートリノ

陽子崩壊実験。1970年代「大統一理論

  • 予期せぬデータ:シミュレーションデータでは解析ソフトはうまくいくが、実データではうまく行かない。1988年頃から間違い探しを1年かけて行い論文を書く。電子ニュートリノは論理値と実測値はほぼ同じ。だがミューニュートリノは半分しかない。研究は続く。1988年頃、世界は「おもしろいかもしれないね。こんなに少ないはずはない。実験の間違いじゃないの」という反応だった。世界の実験結果とかなり乖離していた。

もしニュートリノ欠損がニュートリノ振動であったなら常に自分を正しいと思い積極的に研究を続けることができた。1988年から1994年、カミオカンデは小さかったのでデータが集まらなかった。地球の上から来るニュートリノと地球の裏からくるニュートリノは約半分、でも誤差が大きかった。

研究者、大学院生(一部業者)が1年かけて作った。1996年完成。
スーパーカミオカンデのデータより地球の裏からくるニュートリノは約半分になっていた。

太陽ニュートリノ問題:予想より少ない。ニュートリノ振動と確定(2001年から2002年)。
第3のニュートリノ振動の発見(2011年から2012年)

電子やクォークに比べて桁違い(100億倍)に小さい。宇宙を理解する鍵になるはず。

  • 今後のこと

大きな謎:なぜ宇宙は物質でできていて反物質はないのか? 反物質でできた銀河がない。ビッグバンのころは物質と反物質が同じ量あったが、宇宙が冷えて反物質がなくなった。この謎を解く鍵がニュートリノにあるのではないかという仮説を立てている。

今後の可能性:スーパーカミオカンデの10倍の装置があれば、ニュートリノニュートリノ振動と反ニュートリノニュートリノ振動を研究する。

  • まとめ

幸運なことに、良い師、良い仲間、良い研究プロジェクトに恵まれた。
若い人たちには、基礎科学に興味を持ってもらいたい。

第2部 研究を支える企業の報告

三井金属・茂住洋史氏、三井造船・山口為久氏、富士通・國澤有通氏
コーディネーター 朝日新聞・嘉幡久敬記者

 奈良時代から銅や銀を産出、明治に三井に。強固な岩盤。

    • 神岡が選ばれた理由

 岩盤がノイズを消す。温度が安定している。超純水を生成するための豊富な水に恵まれていた。

    • 地下空洞建設の岩盤エンジニアリング
    • おわりに

 観測はいまでも順調に続けられている。今後も研究サポートを続ける。

 いろんなことをやっている。船だけではない、実験装置も。1960年から実験装置の老舗である。

    • 光電子倍増管破損事故

 約6割の光電子倍増管が壊れた。破損事故の再現実験をするのに3ヶ月かかるといったが、先生方より1ヶ月で行うようにと要求があった。倍増管の中は真空で、それが1個破損すると衝撃波が発生し、そこ衝撃波が隣の倍増管を破壊することが分かった。

  • 今後の取り組み

 今後もさらに実験・研究に取り組んでいきたい。(会場にいる若者へ)科学者だけでなくエンジニアも目指してほしい。

  • 富士通(発表者、22年間この仕事を担当)

富士通とは、ソリューション、スパコンとかを使って支援し、サーバーやストレージを提供している。

    • 一瞬たりともデータを逃がさない

 20年以上蓄えた超巨大データ、約3.1PB(ペタバイト:テラの1000倍)

  • 宇宙とあなたの間に富士通の技術がある

第3部 教えて梶田さん

梶田教授と11人の高校・大学生
コーディネーター 朝日新聞編集委員 高橋真理子氏


  • 小学生:小学生の時の時に好きな科目は?→算数と社会。塾には行ったか?→4年生の時に英語の塾に行った。
  • 高校生:雑誌ニュートンを読んで疑問、ニュートリノは波でもあり粒子でもあるということはどういうことか?→説明が難しい、光と同じで粒でもあり波の性質もある。
  • 高校生:ニュートリノは光や熱に影響されるか?→影響されない。基本的にすり抜ける。
  • 高校生(文部科学大臣賞(ステッピングモータの制御)受賞):高校生の時からニュートリノに興味を持っていたのか、ほかの研究題材に興味を持っていたか?→高校生の時はニュートリノを知らなかった。大学院のときに陽子の崩壊を一生懸命やっていた。途中でニュートリノの研究に変わった。長い積み重ねでニュートリノが重要だと気づいた。
  • 大学生:良い研究プロジェクトはどうやってみ見つける。片づけるのが苦手なのでアドバイスを欲しい。→研究を本格にやるには大学院に行ってからで、大学の時に何がわかっていて何がわかっていないかのアンテナを張る。そして4年後にどのような研究に進めるかを考える。絶対に実験装置を汚くしたらアウト。気をつけること。(質問者)高校の時の研究を続けるべきか?→興味があれば続けてもいい。
  • 大学生(生命工学科):人よりも努力した、これは人よりやったこと、心がけていたことはあるか?→周りに優秀な人がいるのは普通のことなので気にしない。学生の頃は弓(弓道)を引いていた。心開ける仲間ができた。(なぜ弓道を始めたのか?)高校の頃は体が小さかったから他のスポーツでは他に勝てない。スタートラインは皆と同じと思い始めた。
  • 高校生:人生の分岐点でどのように決断したか?→人生の分岐点はいろいろある。大学3年の時弓道部の副主将だった。主将になると4年の夏まで部活をやる必要があり、大学院の勉強をできないので、主将にならないという決断をした。
  • 高校生:壁・困難なことにあったらどのように乗り越えたか?→自分は楽観的、それもある意味重要だと思う。実験はうまく行かないのが常であり、それでも少しは良くなったと考える。
  • 大学生(法学部):他の研究者との共通点はあったか?→難しい質問。常に理解したい、探求心をもち続けている。
  • 高校生:高校と大学で学ぶ数学は違うので、今から大学の数学を勉強した方がいいか?→難しい。興味があれば勉強してもいいが、やらなくても良い。受験には不要である。
  • 高校生:日本の科学教育は世界と比べてどうか?→データを持っていないのでわからないが、ちゃんとやっていると思う。
  • 小学生の親:どのようなことを学ぶべきか?→自然から学ぶべきことはたくさんあると言うことを忘れないこと。
  • 高校生:資金を長期的に安定的に集めるコツは?(会場爆笑)→スーパーカミオカンデはかなりの資金が必要。文部科学省が出しており、税金なので、常に成果を出し続けて国民に理解してもらうことを続けている。
  • 小学生:超弦理論とは?→強い力弱い力、重力を扱っていない。(質問と回答が理解できなかった)
  • 中学生:この発見でどのようなことに役立つのか?→素粒子大統一理論にもう一段深く理解する突破口になる。宇宙の根本的なな謎に迫っていく。


【感想】
 開場には約600人が集まり、盛大な催し物になったようだ。早めに行ったのに席が後ろの方(学生は前、一般は後ろ)だったので、梶田教授や発表者の表情、パワーポイントの画面がとても見づらかったのは残念だった。ただ、内容はとても面白かった。ニュートリノは理解できなくても、大学院生時代からコツコツと研究を続け、問題があっても自分を信じて取り組み続けた成果が、このノーベル賞受賞に繋がったのだということは理解できた。もう少し若い頃にこのような話を聞きたかった。

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