上野日記

自分が主人公の小さな物語

宮部みゆきの『長い長い殺人』を読んだ

宮部みゆきの『長い長い殺人』を読んだ。1992年に光文社より刊行された、長編ミステリ小説(連作小説)だ。2007年にはWOWOWでテレビドラマ化され、2008年には劇場公開、2012年にTBSで放送された。

「刑事の財布」「強請屋の財布」「少年の財布」「探偵の財布」「目撃者の財布」「死者の財布」「旧友の財布」「証人の財布」「部下の財布」「犯人の財布」の10編とエピローグの「再び、刑事の財布」から構成されており、各編の登場人物の財布に意思を持たせその財布の視点で話が語られている、というちょっと変わった設定なっている。

保険金を狙った殺人事件だが容疑者と思わしき人物たちにはアリバイがある。警察もなかなか真相はつかめず、マスコミは大騒ぎして容疑者たちは渦中の人物としてもてはやされる。そして、刑事と探偵の執念により犯人を追いつめる。

2年前に録画したドラマをようやく観ることができた。財布が語っていた内容が映像化されると違和感を覚えた。財布はポケットやカバンに収められているため財布の持ち主たちの会話からしか判断できない状況が何度もあったが、ドラマになると視聴者はカメラ目線ですべてが把握できるからだ。ま、仕方ないか…。

物語の設定もしかり構成も素晴らしく、「財布が語り部」という部分にも違和感を覚えず、次第に話に引き込まれ面白く読むことができた。すばらしい。



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