上野日記

自分が主人公の小さな物語

「京コンピュータ・シンポジウム2013」に行ってきた

京コンピュータ・シンポジウム2013」に行ってきた。

IT勉強会カレンダー」を見ていてこのイベントを見つけ、面白そうだったので申し込んでみた。「京コンピュータ」がいろんな分野で利用されていることを知れたのは有意義だった。

開会挨拶

理化学研究所 理事 坪井 裕 氏

2007年から7回目。「京」は昨年から運用開始した。いろんな分野での成果を期待する。

文部科学省挨拶

文部科学大臣政務官 丹羽 秀樹 氏

みなさんの尽力に敬意を表す。人類の未開発の部分の発見が期待できる。文科省としても利用しやすい環境を整えていく。

自民党・桜井宏衆議院議員が出席。自民党日本維新の会等から祝辞が届いていた。

「京」の魅力

理化学研究所 計算科学研究機構 機構長 平尾 公彦 氏

2012年9月に本格稼働。1日100件のジョブを処理し、フル稼働している。トップ500で2回世界1になった。
京はすべて日本製。我が国の科学技術を世界に見せることができた。
2011年HPCチャレンジ賞4部門すべてで1位を独占した。

世界がその性能にあっと驚いた!

日本の計算科学者は大規模計算に飢えていた。

「京」以前には見渡すことができなかった眺望を「京」は与えてくれた。

思っていた以上に「京」は役に立つことに多くの人が気づいた→ジョブ投入ラッシュ

科学的卓越性と社会的インパクトある成果を上げるには、もっと戦略的に利用すべきか。

「京」が産学連携を加速:自動車用次世代空力・熱設計システムの研究開発コンソーシアム。「京」インシリコ創薬のコンソーシアム

「京」が国際連携を推進:研究協力協定などに基づく研究協力、研究者交流等。国際会議、シンポジウムの開催。その他…。

長期的視点でスパコン開発戦略を。

シミュレーションが未来をひらく

「京」を中核としたHPCIの現状と今後のスパコン開発・利用のあり方について

文部科学省・大臣官房審議官(研究振興局担当) 菱山 豊 氏

目次
1. スーパーコンピュータについて
2. 国際的な状況について
3. 我が国における現在の取り組み
4. 将来のスーパーコンピュータの開発に向けて

最先端の科学技術にはスパコンによるシミュレーションが不可欠

文科省の取り組み:報道では予算も公表されたが、文科省としてはそこまで言及していない。(笑)

ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)への期待

科学技術振興機構・理事長 中村 道治 氏


計算科学(HPC)の課題と期待(まとめ)
大事なのはシミュレーションと思考をつなぐこと

【課題】

  • 課題に対する解くべき計算問題の設定
  • 解析品質がわかる人材育成
  • 複雑現象データの理解と解釈
  • モデリング技術の限界、計算機性能限界
  • 人と計算機の乖離 ・解析品質(手法の特徴・欠点、精度、限界、境界)
  • プリ・ポストの重要性(理解する力)

【期待】

  • 複雑系解明、俯瞰、可視化→視覚的思考、創造へ
  • 計算科学への要求レベルの多様性
  • 従来にない計算手法の進化、アイデア
  • デザイン工学としての計算科学、新しいインタ‐フェース
  • 従来にない活用方法、異分野融合


質疑応答

  • 自民桜井氏:ノウハウの統合のリーダシップはどのように作っていくのか。→個々にバラバラではいくら時間があっても足りない。データベースや「京」をしっている人たちをリアルに共有できる場が必要。大学の地域地域の連携も必要。ネットワークをつなげる必要がある。官と学が一緒にならないといけない。
  • 科学ジャーナリスト:施策して実験が必要だが、シミュレーションでどのように解決するのか。→実験も必要だが、世の中非常に複雑になってきている。
  • 富士通スパコンのスピードアップについていけない人がでてくる。どうするのか?→ 教育が必要で、人材育成をやる必要がある。中小企業のレベルをあげる必要がある。国の施策が必要。

京の威力で「見えない宇宙」の正体に迫る -ダークマターの超大規模シミュレーション-

東京工業大学・教授/理研計算科学研究機構・チームリーダー 牧野 淳一郎 氏


概要

  • 宇宙の始まり、はて、終わりはどうなってるのか?
  • 何がまだわかっていないのか?
  • シミュレーションでわかることは?
  • 「京」でどんな計算をしようとしているか?
  • さらにその先は?


まとめ

  • 我々は、「京」を使って大規模シミュレーションで、銀河系の中のダークマター粒子の分布、どのように観測されるかを予言することを目指している
  • このため、「京」の全能力を発揮できる、非常に高性能な計算コードを開発した
  • その結果、演算性能では「京」の2倍あるBG/Q での米国のグループの計算の2.4 倍の性能を実現し、2012年ゴードンベル賞も獲得できた
  • 日本はソフトウェアが弱い、と言われるがそうでもないところもある
  • 「京」でのサイエンス、このソフトウェア技術の他の分野への応用にも期待して欲しい

説明がへたで何をしゃべっているのか聞きとりづらかった。もうちょっとゆっくり、論理的に順序立てて語尾を明瞭にしゃべればいいのに…。

質疑応答

  • 一般参加:ダークマターを計算するときの条件の違いを教えてほしい。→(聞き取れなかった)
  • 一般参加:「京」を使ったメリットは?→性能が高いので量が大きい計算ができる。
  • 一般参加:米国が無駄な計算をしている。チューニングすると負けるのでは。どうするのか?→米国のチューニングが遅れているのは事実。自分たちができることをやる。
  • 自民桜井氏:シミュレーションの初期設定などはどうなっているのか。発見されていないものなので分からないのではないか?→ある程度予言されている。
  • 自民桜井氏:本当にやりたいことをやるにはどれくらいの能力が必要か?→今の「10の12乗」くらいのコンピュータがあれば求めているシミュレーションができる。(場内爆笑)

生きた心臓を京に再現

東京大学・教授 杉浦 清了 氏

シミュレーションの意義:1.見えないものを見る(原子の動き、ブラックホールの中、…)。2.不可能な実験を行う(巨大建造物、気候変動、…)
→限りなく本物に近い臓器モデルをコンピュータ内に作る。

質疑応答:質問内容とその回答が理解できなかった…orz。

スパコン「京」が拓く医薬品開発の未来 -速い安い旨い薬づくり-

京都大学・教授 奥野 恭史 氏

「京」による創薬イノベーション「京」を利用することで、より速く、より正確に、医薬品を予測することが可能になり、 医薬品開発の成功確率が大幅にアップし、数百億円の開発費削減が実現される→開発費の削減は、製薬産業の景気アップをもたらすだけでなく、医療費の根本削減や、難病などの患者数が少ない希少疾患の医薬品開発を可能にする

質疑応答:これも理解できなかった。

総合地震シミュレーターを目指して

海洋研究開発機構・プロジェクトリーダー 金田 義行 氏

背景

  • 地球温暖化時の台風の動向が今なお不明確、より高精度の集中豪雨予測のニーズ
  • 地震発生時における避難・救援行動に必要な高解像度の被害予測、津波による浸水域等の高精度な情報のニーズ。

質疑応答

  • 自民桜井氏:工数は?→モデルを作るのに数ヶ月かかる。5人から10人。 プラットフォームは「京」の中。
  • 文科省田中氏:ポスト京はどれくらいの速さがあれば使えるようになるか。→100倍は必要。情報を取り込む環境も必要で、その整備も重要だ。
  • 一般参加:人間の避難行動は不測な行動をとるので、どのようなシミュレーションをするのか。→個人個人(土地勘、観光客など)の情報を入れてシミュレーションする。だから誘導する人が必要で、その辺のつながりの研究をしている。

新物質から新エネルギーへ

東京大学・教授 常行 真司 氏

原子配列を見るもう一つの手段:物理の基本原理に基づく計算機シミュレーション

「京」/「ポスト京」によるこれからの計算物質科学:計算機シミュレーションによる新物性の機構解明と定量的な物性予測、物質設計
→新物質・新材料の知財早期確保
→開発期間短縮

試作実験、評価する計測との連携が鍵(元素戦略プロジェクトで実践)

質疑応答:理解できなかった。

自動車や船の周りの流れ解析: 京を利用した最新成果

東京大学・教授 加藤 千幸 氏

内容
1.京に対する産業界の期待
2.水や空気の流れと機械の性能
3.京で初めて実現できる流れの数値計算
4.幾つかの具体的な事例

質疑応答

  • 渦は小さくなったが今後はどうするのか。→さらに小さくはしない。それを設計に反映させて実用化させる。速くなると渦も小さくなる(飛行機とかジェット機)はポスト京で可能になる。車の衝突実験では車体だけでなく、人への影響もシミュレートできるようになる。
  • 一般参加:燃焼とかもやっているのか。→やっている。

京を利用した大規模分子シミュレーションによるタイヤ材料開発

住友ゴム工業株式会社・常務執行役員 中瀬古 広三郎 氏

内容
1.自動車・タイヤを取り巻く社会動向とタイヤに求められる性能
2.タイヤ開発のためのシミュレーション技術活用の歴史
3.タイヤ材料シミュレーション
4.京スパコンを用いた大規模分子シミュレーション

今後のタイヤ開発における3つの方向性:低燃費性、安全性(グリップ)、省資源(ゴム強度)←これらの追及・実現は背反関係にある→三律背反するタイヤ性能を全て向上させる。

SPring-8での測定から大きなモデルサイズが必要なことが分かった→社内の計算モデルサイズの数百倍〜数千倍となり、シミュレーション実行には「京」が必要(社内では実施不可)。

まだ「京」は使用していないが、今後「京」を利用したシミュレーションを行う予定らしい。

質疑応答

  • SPring-8の費用は?→19団体。それほど多くかかっていない。データを読む人件費がかかった。
  • 科学ジャーナリスト「京」は10万円(成果非公開で1ペタフロップスを1時間使った場合)。ユーザとしてはどうか?→議論は必要。
  • SPring-8の関係者:要望はないか?→当社に力があればコンソーシアムとか開けると思う。速い計算フィードバックは必要だと考える。(質問者の「いつもご利用ありがとうございます」に場内爆笑に包まれた)

閉会挨拶

財団法人高度情報科学技術研究機構理事長 関 昌弘 氏

参加していただいたみなさんに感謝する。「京」の性能をめいっぱい使っていることがわかった。産業と連携していることがわかった。「ポスト京」に向けての計算科学分野の今後のご支援をお願いする。



【おまけ】

クリアファイルは受付で配られたものでなかなか恰好いい。左は「手拭い」でアンケートに答えると貰えた。

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