上野日記

自分が主人公の小さな物語

辻村深月の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を読んだ

辻村深月の『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を読んだ。2009年に講談社より刊行され、第142回直木三十五賞候補(2009年)、第31回吉川英治文学新人賞候補(2010年)になった長編小説だ。『鍵のない夢を見る』(第147回直木三十五賞受賞)、『ツナグ』(第32回吉川英治文学新人賞受賞)を読んだとき、どちらかの解説でこの小説が高く評価されていたのでいつか読みたいと思っていたら、図書館の書架で見つけ即借りてきた。

NHK長澤まさみ主演でテレビドラマ化することが決まっていたが、作者が脚本の内容に納得しなかったためにドラマ化が白紙撤回になり、NHK講談社に損害賠償を求める民事裁判になっているらしい。そう言えばそんなニュースがあったよな、と本を借りた後に調べて思い出した。
幼なじみで親友のチエミが母親を殺し逃亡した。警察も必死に探すが行方が分からない。心配になったみずほはチエミの行方を追うことにし、チエミの同級生や大学時代の合コン仲間、小学校の担任、職場の同僚に話を聞いて回る。チエミ母子はとても仲がよく周囲は事件自体に驚くが、親離れ子離れできていなかった母子だった。みずほは子どもの頃母親から虐待を受けていたという母子の確執があった。
1章はみずほの視点で、2章は事件を起こし逃亡中のチエミの視点で描かれている。幸せな結婚をしたが流産したみずほ。結婚できないと思いつつも男にしがみつこうとするチエミ。友達同士の関係や母子の関係の裏側みたいなものが描かれている。
何故チエミは母親を殺したのか、何故逃亡しているのか、題名の「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」は何を意味するのか、という観点で読み進めるのも面白かった。

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