伊坂幸太郎の『砂漠』を読んだ。2005年に 実業之日本社(本書は 2008年の Jノベル・コレクション)より刊行され、2006年の直木賞候補となった青春小説だ。
大学の同じ学部に入学した男女5人が大学生活の中で成長していく姿を描いている。飲み会、合コン、ボーリング大会、麻雀といった学生がよくするであろう遊びと、超能力や通り魔犯・空き巣犯といった小説ならではの事件に遭遇する。大学4年かの出来事を「春」「夏」「秋」「冬」「春」の各章に綴られている。なかなか面白かった。
そういえば学生の頃こんなことがあったよなあと思いながら読んでいた。飲み会もさんざんやったし、麻雀も入門書片手に朝方まだで打ち続けた。ボーリングも一時流行り暇があればボールを転がしていた。「やろうか」と言えば麻雀だったし、「行こうか」と言えばゲームセンターだった。懐かし……。
最後の「春」の章の卒業式で学長がこんなことを言っている。
学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時はよかったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ。
人間にとって最大の贅沢は、人間関係における贅沢のことである。
サン=テグジュペリの本からの引用らしいが、ちょっと心に突き刺さってしまった。私は、大学卒業後、社会と呼ばれる「砂漠」で未だに彷徨っているのかもしれない。