上野日記

自分が主人公の小さな物語

「ユーザ企業のための エンタープライズ・クラウド フォーラム」に行ってきた

東京ミッドタウン ホール(港区赤坂。六本木駅近く)において開催された「エンタープライズ・クラウド フォーラム」に参加してきた。ITpro主催のフォーラムだ。最近「クラウド」という言葉がよく聞かれるようになったが、2008年ごろから使われだしたらしい。

オープニング討論の会場はとても広く、500名が参加予定でほぼ満席のようだった。

オープニング討論:ビジネスに生かす! ビジネスを変える!「企業向けクラウドの最前線と導入ポイント」

東京工業大学 大学院 情報理工学研究科准教授 首藤一幸氏
野村総合研究所 情報技術本部 技術調査部 上級研究員 城田真琴氏
モデレータ ITpro編集長 吉田琢也氏

<企業向けクラウドの最前線と導入ポイント>
クラウド・コンピューティングの認知度は急激に上昇中。
   概要を知っている:23.9%->60.6%

認知度は向上する一方で、利用は始まったばかり
   利用してる:4.1%、試験的に利用している 3.0%、検討中:5.7%→「以前として様子見の企業が多い」

新しいサービス:データ処理、WEBは当たり前になってきている。ソフトウェアの開発までクラウドになってきている。手元のリソースは使用しなくなってきている。そこまで行ってきているのかと強く感じてきている。

パブリック・クラウド大手の料金は競争の結果、ほぼ横並び($0.1/時間程度)、Amazon EC2を追いかけるローカルベンダーもほぼ同程度の料金体系になってきている。
国産クラウドもアマゾンに匹敵する程度の料金となっている。ソフトバンク テレコムホワイトクラウド4725円/月、IIJ GIO パブリック8000円/月、ニフティ ニフティクラウド12.6円/時間 or 7875円/月。若干高いが近くなってきている。

<データストアの新潮流>
・key-valueストア;キーと値の組を格納するというシンプルなDBMS
・NoSQL(というムーブメント) リレーショナルデータベース(RDB)ではないDBMS
RDBと力の入れどころが違う:ひたすら高性能 and/or 大容量

【感想】
クラウドは今後益々利用されていくようになることは確実のようである。

エンタープライズクラウド 〜学ぶ時代から活用する時代へ〜

日本ユニシス ICTサービス本部 サービス商品企画部 MiF企画G グループリーダ 森駿氏


・分類
 SaaS(Software as a Service), Paas(Platoform as aService), Iaas(Infrastructure asaService)
 パブリック・クラウドクラウド事業者が運営)、プライベート・クラウド(顧客環境で運用)、エンタープライズクラウドプライベートクラウドアウトソーシング

シスコのクラウド戦略と仮想コンピューティング環境

<シスコのクラウド戦略>
・セキュアなクラウドを構築する組織に、製品、ソリューション、および、サービスを提供する
・サービスプロバイダーとともに、セキュアなクラウドソリューションおよびサービスを、サービスプロバイダーの顧客に協力して提供する
・技術革新、オープンな標準、および、エコシステム開発を推進して、市場をクラウドに向かわせる。

企業経営を支えるICTインフラのあるべき姿 〜クラウドコンピューティングがもたらす変革とは〜

富士通 クラウドビジネス推進室 室長代理 武居正善氏

富士通クラウドへの取り組み>
クラウドサービスの提供
クラウドを構築するプロダクトの提供(富士通データセンター、仮想化対応プラットフォーム、運用自動化ミドルウェア

KDDIクラウドサービス戦略 〜日本企業におけるクラウドコンピューティングの捉え方〜

KDDI ソリューション商品企画部 プラットフォーム・セキュリティG 柳亮弥氏

KDDIクラウドサーバサービスのデモもがあった、WEB(ブラウザ)経由でシステムの構築(ネットワーク、ロードバランサー、WEBサーバ等)をドラッグ&ドロップで簡単に設定できるのはとても面白かった。

物理セキュリティ、セキュリティ監視オプション、セキュリティ診断オプション、レポーティング、信頼性(障害発生時の回復方法)の説明は分かりやすかった。

セキュリティベンダーが挑戦するクラウド時代のセキュリティ

トレンドマイクロ マーケティング本部
データセンター/コアテクノロジーマーケティンググループ
プロダクトマネージャー 染谷征良氏

<Deep Security Virtual Applianceによる仮想化セキュリティ>
IDS/IPS、Webアプリケーションプロテクション、ファイアウォール、改竄検知、セキュリティログ監視を各サーバにインストールされたエージェントが行う。
マルチプラットフォームに対応:Win/Linux/Solaris/HP-UX/AIX
これらをマネージャが一元管理している。

再確認、クラウド導入時の検討ポイント

住商情報システム 戦略ビジネス事業部門 新規事業開発室
シニアエンジニア 手塚信之氏

クラウドを利用する場合、まず簡単な所から徐々(1〜4のレベル分け)に行うようがよい。まず、レベル1としてメールシステム・PCオフィスソフトをSaaS化。→コスト削減を最重要視
レベル2は、ビジネスコラボレーションコミュニケーションのためのSaaS利用。→仕事の効率性向上とそのためのコスト最適化
レベル3は、SaaS化によって機能向上コスト削減が見込める機能をSaaSへ移行→運用コスト削減とシステム改善の両立
レベル4は、既存システムの題希望仮想化基盤への移行 PaaS/IaaS化→情報システム全体の最適化

パネルディスカッション:「クラウド時代に"作る"ユーザー企業」

クロス・マーケティング システム開発ユニット エグゼクティブマネージャー 永井秀幸
東急ハンズ  IT物流企画部 部長 長谷川秀樹氏
楽天 技術理事 吉岡弘隆氏
モデレータ:日経コンピュータ編集 中田敦氏

●ユーザ企業がどんなシステムをクラウドを使用して活用しているか。クラウド時代とはどのようなものか。

Amazon EC2での開発>
ネットリサーチ:ネットでのアンケートを集計してレポートを作成し納入するシステム。700万人。アンケート時には非常にサーバに負荷がかかる。
「限られた予算でひとつでも多くの機能(アプリケーション)の実装:コスト、スピード、拡張性
セキュリティ不安→VPNで通信暗号化、第三者によるセキュリティ監査を実施
初期設置ではリソース不足→アマゾンに直接交渉し確保した
遅延→サービスに支障があるような遅延はなかった
管理性に問題→管理ツールを独自開発した

良いところ:サーバの複製バックアップが速い。
悪いところ:アマゾンの都合で仮想サーバが再起動(年3回ダウン。数時間ダウンする。稼働率99.5%なので範囲内)。クレジットカード払いが不便。すぐに上限の100万円を越えた。法人カードは日本の文化にあわなかった。対策としてはカードの上限をあげてもらった。

費用はかなり安くなった。運用コストは25%低減。
管理ツールが使いづらい。自社開発の管理ツールはサーバを擬人化している。

オープンハイブリッドクラウドコントローラー→将来はGPLでソースを公開したい。(オープンソース
ミッションクリティカルなアプリもクラウドで運用したい。


iPhoneアプリの開発>
クラウドがダウンしても、電話しなくなった。電話しても既に対応しており、してもしょうがない。エンドユーザには適当に回復時間を回答する。
iPhoneとグーグルで連携したジョークアプリの開発。
iPhone側のアプリとGAE(GoogleAmazon EC2でもよかった)。
東急ハンズとしては、クラウドとしては構えておらず、おもしろそうなのをやっている。たまたま、そこにクラウドがあった。

楽天吉岡さん>
なぜ楽天に移ったか→ソフトウェアを作る企業(21世紀でメーカではなく普通の企業が作るようになった)に移りたかったので楽天に移った。
(ネクタイ姿の吉岡さんを見たのは初めてかもしれない……)

●これからIT業界がどのように変わっていくか
・頭を切り替える。何でもかんでもアプリを買うのではなく、自分たちでなにが出来るかを考える。
・大企業が勝つのではなく、学生も含めて勉強したものが勝つ。ユーザ企業側もがんばれば何とかなる(特別な機器は必要ない)。おもしろい企業とやりたい。
・ユーザ側が責任を持ちベンダーに押しつけない。そうするとお互いいい仕事ができるのではないだろうか。
・好きだからやっている人のアプリは面白味がある。

モデレータ:クラウドでアプリを作りやすい時代になってきた。他社にたよらず自前で作る時代になってきたという思いを伝えたかった。


パネルディスカッションは、内容が濃かった割に時間が短く、ちょっと物足りなさを感じた。そして、吉岡さんはもっとしゃべりたさそうだった。

(2010/2/17作成)

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