読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

上野日記

自分が主人公の小さな物語

夏川草介の『本を守ろうとする猫の話』を読んだ

夏川草介の『本を守ろうとする猫の話』を読んだ。2017年に小学館より刊行された長編小説だ。

f:id:uenoshuichi:20170414203409j:plain:w300

以下の概要はAmazonより:

「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
 夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。
 痛烈痛快! センス・オブ・ワンダーに満ちた夏川版『銀河鉄道の夜』!

育ての親の祖父が亡くなり一人ぼっちになった主人公の男子高校生。一度も会った事がない叔母のところに引き取られることになったが、引っ越しまでのあいだ学校へも行かず、引きこもっていた。そんなところにしゃべる猫が「お前の力が借りたい」と現れる。猫に連れていかれた迷宮には、読んだ本の数を競う男、本は〈あらすじ〉だけで十分だという男、目先の利益だけを考える出版社社長が待っていた。

亡くなったおじいさんの言葉がいい。

  • ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ。
  • お前はただの物知りになりたいのか?
  • 読むのはよい。けれども読み終えたら、次は歩き出す時間だ。

最後に主人公の少年の言葉もまたよい。

  • 本にはたくさんの人の思いが描かれています。苦しんでいる人、悲しんでいる人、喜んでいる人、笑っている人……。そういう人たちの物語や言葉に触れ、一緒になって感じることで、僕たちは自分以外の人の心を知ることができるのです。身近なひとだけじゃなくて、全然違う世界を生きる人の心さえ、本を通して僕らは感じることができるようになるのです。

孤独だと思っていた少年には自分を思ってくれる友達がいることを悟り、少しだけ成長したようだ。




© 2002-2017 Shuichi Ueno