上野日記

自分が主人公の小さな物語

小川糸の『ツバキ文具店』を読んだ

小川糸の『ツバキ文具店』を読んだ。2016年に幻冬舎より刊行された長編小説で、小川糸の作品は5年前に読んだ『食堂かたつむり』に続き2冊目だ。

以下の概要はAmazonより:

言いたかった ありがとう。言えなかった ごめんなさい。
 伝えられなかった大切な人ヘの想い。あなたに代わって、お届けします。
 家族、親友、恋人……。
 大切に想っているからこそ、伝わらない、伝えられなかった想いがある。
 鎌倉の山のふもとにある、
 小さな古い文房具屋さん「ツバキ文具店」。
 店先では、主人の鳩子が、手紙の代書を請け負います。
 和食屋のお品書きから、祝儀袋の名前書き、
 離婚の報告、絶縁状、借金のお断りの手紙まで。
 文字に関すること、なんでも承り〼。
 ベストセラー『食堂かたつむり』の著者が描く、鎌倉を舞台した心温まる物語。

たぶん新聞だったと思うけど、本の紹介文を読んで、上記のような内容だったか忘れたけど、興味を持ち図書館に予約した。

鎌倉に古くからある文具店、祖母に書道を厳しく指導された女性が主人公だ。両親の思い出は記憶にない。祖母の思い出は辛い日々しか蘇らなかった。祖母への反発で高校で海外に飛び出し、祖母の死で鎌倉へ戻る。

代書を頼みに来る人々はそれぞれだ。「死んだペットの悔やみの手紙」、「結婚式出席者への離婚報告の手紙」、「結婚できなかった人への何気ない近況報告の手紙」、「借金の断り状」、「姑への還暦プレゼントの送り状」、「死んだ夫の手紙を待ち続ける病床の妻(依頼者の母)への手紙」、「絶交を伝える手紙と絶縁状」など。そして主人公が初めて書いた「祖母への手紙」が心温まる。

人それぞれが心に持つ思いを考えて文章はもちろん、紙や書体、筆記具からインクの色、そして切手に至るまで細心の注意を考えて代書を務める彼女の姿勢には感心した。

心温まる作品だった。





© 2002-2024 Shuichi Ueno