上野日記

自分が主人公の小さな物語

横山秀夫の『陰の季節』を読んだ

横山秀夫の『陰の季節』を読んだ。1998年に文藝春秋より刊行された短編集で、「陰の季節」「地の声」「黒い線」「鞄」の4編が収録されている。第5回松本清張賞を受賞し、第120回直木三十五賞の候補になった作品だ。
舞台は『64(ロクヨン)』と同じくD県警本部で二渡警視が登場する。

以下の概要は裏表紙より:

警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下りポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた……。「まったく新しい警察小説の誕生」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第一弾。

陰の季節天下り先のポストを辞任しない元刑事部長。今回の人事異動をどうすべきかと奔走する二渡。そこには過去の未解決事件が絡んでいた。

地の声:県警内部の不祥事を密告する文書が届き、監察官が調査を始める。密告者は誰か、密告内容の真偽は…。これまた意外な結末に驚く。

黒い線:似顔絵で犯人逮捕に貢献した婦警が出勤しない。勤務態度がまじめだった婦警が失踪するには不自然で、犯人関係者が起こした事件か。犯人の似顔絵があまりにも似すぎているところに謎はあるのか…。なるほど、そんな裏があったのね。

:県議会で議員が質問内容を事前に入手しようと奔走する秘書課の課長補佐。議会で本部長が恥をかくと自分の出世も危うい。議員に対し土下座までしてもなかなか教えてくれない。議員が席を外したすきに議員の鞄に探ってしまう。しかしそこには質問内容はなかった。何故だ…。


短編集で読みごたえはなかったが、読んでいて想像もしなかった結末には驚いてしまった。なかなか面白かった。

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