上野日記

自分が主人公の小さな物語

西加奈子の『サラバ!』を読んだ

西加奈子の『サラバ!』を読んだ。2014年年に小学館より刊行され、第152回直木賞と2015年本屋大賞2位を受賞した長編小説だ。図書館に1月に予約し、ようやく読むことができた。

以下の内容はAmazonより:

【上巻】1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに―。
 【下巻】父の出家。母の再婚。サトラコヲモンサマ解体後、世間の耳目を集めてしまった姉の問題行動。大人になった歩にも、異変は起こり続けた。甘え、嫉妬、狡猾さと自己愛の檻に囚われていた彼は、心のなかで叫んだ。お前は、いったい、誰なんだ。

イランで生まれた主人公の悩める半生が回想のように綴られている。上巻を数十ページ読んだ時点で面白みがなく読むのを諦めようかとも考えたが、直木賞だしなぁ、きっと面白くなるはずと思いつつもなかなかページが進まない。他者の感想を読むと下巻から面白くなると書いてあるので、とりあえず読み進める。

上巻は主人公が誕生してから高校生までの話、下巻は大学から現在(37歳)の話。日常の出来事、両親や姉の話から、友だちの話が延々と続く。そんなに驚くような事件が起きるわけではないのだが、徐々に話に引き込まれ面白くなってきた。

最後の方は、自分と主人公がダブって(仕事もなく、独身、髪の毛が薄くなり、図書館で時間を潰す)見えてきた。そんな時主人公はこう思う。

僕には分かっていた。僕だって、そう思っていた。自分はいつまでそうしているつもりなのだろうか。自ら為すことなく、人間関係を常に相手のせいにし、じっと何かを待つだけの、この生活を、いつまで続けるつもりなのだろうか。

身につまされる思いがした。主人公の姉は「いつまで、そうやっているつもりなの?」と問う。主人公は生まれたイランに旅をしそこで知り合って親友に再会する。そして自分のやるべきことを見つけ出すのだが、最後は少し感動してしまった。

長くて読み疲れたけど、まぁまぁよかったかな。さすがは直木賞だ。

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