上野日記

自分が主人公の小さな物語

重松清の『せんせい。』を読んだ

重松清の『せんせい。』を読んだ。2008年に新潮社より『気をつけ、礼。』で刊行され、2011年の文庫化で『せんせい。』に改題された教師と生徒の短編集だ。「白髪のニール」「ドロップスは神さまの涙」「マティスのビンタ」「にんじん」「泣くな赤鬼」「気をつけ、礼。」の6編が収録されている。

以下の概要は裏表紙より:

先生、あのときは、すみませんでした―。授業そっちのけで夢を追いかけた先生。一人の生徒を好きになれなかった先生。厳しくすることでしか教え子に向き合えなかった先生。そして、そんな彼らに反発した生徒たち。けれど、オトナになればきっとわかる、あのとき、先生が教えてくれたこと。ほろ苦さとともに深く胸に染みいる、教師と生徒をめぐる六つの物語。

白髪のニール:突然先生からギターを教えてほしいといわれ戸惑う生徒。もうすぐ父親になるのでニール・ヤングの曲を弾きたいという理由だった。それから30年、当時の先生の年齢を超えた生徒は人生をロールしていた。

ドロップスは神さまの涙:いじめを受けていた少女は授業が始まると頭痛と腹痛で保健室に毎回駆け込む。保健室の先生から貰ったドロップスはおいしかった。

マティスのビンタ:美術の先生のビンタが忘れられない。30年たって介護施設を訪れたが、先生は認知症だった。ちゃんと謝りたい。後悔でもなく、申し訳なさでもなく、ただ胸がうずく。

にんじん:20年前の小学校の生徒たちから同窓会の知らせを受けた当時の担任。毛嫌いをしていた生徒が一人だけいた。その生徒はどのように思っていただろうか。

泣くな赤鬼:担任で野球部の監督だった先生。生徒は高2で野球部を退部、そして学校もやめた。それから10年、ばったりと出会う。生徒は結婚もし、子供もいた。立派な大人になったなと、初めて先生から褒められた生徒はとても喜んだ。しかし若くして癌におかされていた。先生はあの頃何もしてやれなかったと悔やむ。生徒はそんなことはないという。

気をつけ、礼。:吃音症の生徒と中学の時の担任。先生から気合を入れられる「気をつけ、礼、背筋を伸ばせ、顔を上げろ、堂々としゃべろ」と。何故か吃音が軽くなる。その先生はギャンブルで借金を重ね、生徒の親にまで金を借りて逃げてしまった。高校生になっていた生徒はその話を聞いて、再び吃音がひどくなり、グレてしまう。


昔お世話になった先生たちの顔がいろいろとよぎってしまった。



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