上野日記

自分が主人公の小さな物語

百田尚樹の『輝く夜』を読んだ

百田尚樹の『輝く夜』を読んだ。2007年に『聖夜の贈り物』として刊行され、2010年の文庫本化(講談社)で改題された短編小説集だ。「魔法の万年筆」「猫」「ケーキ」「タクシー」「サンタクロース」の5編が収録されている。


どの話もクリスマスイブが主題となっていて、その夜に「奇蹟」が起きる。

魔法の万年筆:リストラされて女性はその夜ホームレスに施しをしたら、「魔法の万年筆」だといわれ一本鉛筆をもらう。その鉛筆で願い事が三つまで叶うと。おいしいケーキ、弟の会社の倒産回避、弟のように接していた隣人の男性が…。「奇蹟」が起きた。

:契約先の会社で最終日(クリスマスイブ)に残業。社長は残業はしなくてもいいと言ってくれたが、暖かく自分を迎えてくれた社員と社長への恩返してと思い残業をする。仕事が終わり社長の食事への誘いを断り帰ろうとするが、彼女の飼い猫の話を聞いた社長はしつこく粘る。そしてその猫は…、「奇蹟」が起きた。

ケーキ:癌で入院中の二十歳の理容師の女性、イブなのに危篤状態で持ちそうにない。でも「奇蹟」が起きた。神がかりとしか言えないような回復で病気が治るが親指に後遺症が残り、理容師を諦めてケーキ職人になる。そこで知り合った男性と結婚し孫までできて70歳で天寿を全うしようとしている。と思いきや時間は元に戻り…。「奇蹟」だったのか。

タクシー:沖縄に旅行に行った女性二人、現地でナンパされた男性(東京でテレビのディレクタをしている)と東京でまた会いたいといわれ携帯番号を教える。女性の職業は工員なのに国際線の客室乗務員と嘘をついていたため逢いたくはなかったが、一度だけならいいかと思い会ってしまった。本当のことが言えず数回会うことになるも、女性は本当のことは言い出せず、男性が本気で好きになっていることを感じていた。これで最後にしようと思ったクリスマスイブの夜、その男性は来てくれなかった。と、数年後たまたまのったタクシーの運転手に思い出話のように話したら…、「奇蹟」が起きた。

サンタクロース:母親は幼いときに死に、男で一つで育ててくれた父親も2年前に死んだ。結婚を決めていた男性も突然の交通事故で死に絶望に打ちひしがれていたが、身ごもっていることを知る。それでもこの子を産んで育てるだけの経済力はないので、天国で出産し両親と彼とで幸せに暮らそうと自殺を考える。電車でたどり着いた町で雪の中をさまよい歩くと教会の明かりが目に入り、引き寄せられるように中に入ろうとするとそこにはサンタクロースの格好をした牧師がいた。あなたを助けるために待っていたと。彼は80歳で本物のサンタクロースのような髭や頭をしており、手には星型の火傷があった。牧師に勇気づけられた彼女は子供を産むことを決意し、年明けにお礼に教会に向かうがその町にはそのような牧師はいなかった。女性は今の夫と巡り合い4人の子供たちと幸せに暮らしていた。クリスマスイブの夜、子供たちだけで遊んでいたらストーブが倒れ長男が火傷を負う。「奇蹟」が起きた。


短編なので少し内容が薄いし、いろんな本を読んできたので「これくらいの奇蹟」ではちょっと物足りなさを感じてしまった。

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