上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を読んだ

東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を読んだ。2012年に角川書店より刊行され、第7回中央公論文芸賞を受賞した連作短編集だ。「回答は牛乳箱に」「夜明けにハーモニカを」「シビックで朝まで」「黙祷はビートルズで」「空の上から祈りを」の5話が収録されている。

深夜に空き巣(あとで強盗)を犯した3人の青年が逃げ込んだ廃屋の「ナミヤ雑貨店」で不思議な体験をする。シャッターの郵便受けからある悩み相談が舞い込む。その悩みに対する回答を裏口の牛乳箱に入れる。30数年前と時空が繋がっていることに3人は気が付く。
回答は牛乳箱に:オリンピックをとるか、恋人をとるか、という「月のウサギ」からの悩み。オリンピックの強化選手に選ばれた相談者(女性)は恋人が余命いくばくもないことを知らされる。彼の夢であるオリンピック出場に向けての練習に打ち込むか、彼の看病に専念するか悩み手紙を投函する。それが30数年前(日本がボイコットしたモスクワオリンピックの1年前)からの手紙だとわかる。

夜明けにハーモニカを:ミュージシャンを目指すが目が出ない魚屋の息子「魚屋ミュージシャン」の悩み。ミュージシャンを目指し大学を中退するが、父親の病気を知り実家に戻ってくる。悩んだ末に「ナミヤ―」の回答を得て地道な活動をするも、慰問演奏で訪れた児童養護施設で火事にあう。

シビックで朝まで:ナミヤ雑貨店店主とその息子。父親の最後の願いとは。最初は子供たちの他愛のない質問(テストに100点を取るにはどうすればいいか。野球でホームランを打つにはどうすればいいか)に対し、とんちをきかせて回答していた店主は、回答をもらって人たちがその後どうしたのか気になった。役に立ったのか立たなかったのか。その返事を自分の三十三回忌に告知してほしいと息子に頼む。半信半疑ながらもその息子は父親との約束を果たす。ただ時空が超えた雑貨店には32年後の時代から返事が送られてきた。

黙祷はビートルズ:裕福な家庭だったが父親の事業の失敗で夜逃げをすることになった。両親についていくべきか「ポール・レノン」からの悩み。ナミヤ雑貨店からの返事は「ついていくべきだ」だった。が、その少年は夜逃げ途中に両親から逃げ出してしまう。警察にとらわれても自分の素性は明かさない。養護施設で育った彼は大人になり、32年ぶりに再びその地を訪れた。ナミヤ雑貨店の主人に返事を送るために。

空の上から祈りを:高校を卒業してOLになるも給料が安い。水商売の方が稼ぎもよく自分の目標に近づけるのでホステスに専念したいが周りを説得するにはどうすればいいかという「迷える子犬」からの悩み。この悩みを受け取ったのが32年後の世界の青年3人だった。彼女の真剣さを信じこれから日本に起こるであろう経済的事態(バブルとその崩壊。インターネット時代)を教え、それに見合った事業と経営をアドバイスする。


ナミヤ雑貨店の老店主と彼にかかわった悩み相談をした人たちの運命は時空を超えて繋がっていた。5つの短編の登場人物がこれほどまでに繋がっていたとは、さすがは東野圭吾だ。確かに「奇蹟」としか言いようがない展開には涙した。
ま、小説だけどね。
舞台化はされたみたいだけど、ドラマか映画にしてほしい傑作だ。

© 2002-2017 Shuichi Ueno