上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の『夢幻花』を読んだ

東野圭吾の『夢幻花』を読んだ。2013年5月にPHP研究所より刊行された長編ミステリだ。初出は月刊誌「歴史街道」の2002年7月号から2004年6月号なので、単行本になるまでに10年近くかかっている。

以下の内容はPHP研究所のHPより抜粋。

「黄色いアサガオだけは追いかけるな」―謎のメッセージが意味するものとは。
独り暮らしをしていた老人・秋山周治が何者かに殺された。遺体の第一発見者は孫娘の梨乃。梨乃は祖父の死後、庭から消えた黄色い花のことが気にかかり、ブログにアップする。ブログを見て近づいてきたのが、警察庁に勤務する蒲生要介。その弟・蒼太と知り合った梨乃は、蒼太とともに、事件の真相と黄色い花の謎解明に向けて動き出す。西荻窪署の刑事・早瀬らも、事件の謎を追うが、そこには別の思いもあった。
「こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない」と著者自らが語る長編ミステリ。

「ずるずると出版を引き延ばしているうちに小説中の科学情報が古くなってしまい、ストーリー自体が成立しなくなる」と東野圭吾が語っている。本文中には、東日本大震災原発事故や原子力エネルギーなどの話が盛り込まれていたり、FacebookなどのSNSも登場していたりと10年分の隙間は確かに埋めてあった。なるほどね、と読んでいてニンマリする。

冒頭の50年前のエピソード(プロローグ1)に関連した話がなかなか出てこないので、不思議に思っていたら、そういうことか。点と点が結ばれていくような、絡まった糸がほどけていくような展開にはいつも感心させられる。

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