上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の『学生街の殺人』を読んだ

東野圭吾の『学生街の殺人』を読んだ。1987年に講談社より刊行され、1988年に第9回吉川英治文学新人賞と第41回日本推理作家協会賞(長編部門)の候補になった長編推理小説だ。

大学を卒業するも将来の目標もなく、両親には大学院にいくと嘘を言い、寂れた学生街でバイトを続ける青年が主人公。バイト先の先輩が殺され、年上の彼女がほぼ密室状態で殺される。そして再度殺人事件は発生する。何も知らない死んだ彼女の過去が犯人を追いつめるとともに明らかになる。
主人公のアパートに突然父親が訪れる。両親にはとっくに嘘がばれていた。そんな中の将来の進路に悩む息子と父の会話を以下に抜粋する。

どう生きるべきかなんてことは、ちょっと年をくっているからといって話して聞かせられるものじゃない。自分でも満足にわかっとらんのだからな。
そうなのかい?
どんな人間でも、一種類の人生しか経験することはできん。一種類しか知らんわけだ。それなのに他の人間の生き方をとやかくいうことは、傲慢というもんだ。
道を間違ったらどうするんだい?
間違ったかどうかも、本当は自分で決めることだと思うがな。間違いだと思えば引き返せばよい。小さなあやまちをいくつも繰り返しながら、一生というのは終わっていくものではないかな。
中には大きなあやまちもある。
それは、ある。その場合でも、その事実から目をそらしてはいかんだろうな。償う気持ちを宝にして、その後のことにあたるべきだろうな。それでなくては、生きてはいけん。たぶん、な。

犯人探しの「推理」とはあまり関係ない(少しはあるかな。どっち?)部分だが、なかなか深いと思った。

真犯人が捕まったはいいが、疑問点がかなり残っているなと思いながら読み進める。なんだ、この思わぬ展開は…。そこまで人間の心理を絡めているとは思いもよらず、あまりにも深すぎて驚いてしまった。

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