上野日記

自分が主人公の小さな物語

重松清の『トワイライト』を読んだ

重松清の『トワイライト』を読んだ。2002年に文藝春秋より刊行された長編小説だ。

26年前、小学校のクラス6年3組で埋めたタイムカプセルが、学校が廃校になり取り壊しになる。みんなが40歳になったら掘り起こそうとしていた。約束より1年早く連絡の取れたみんなでそのタイムカプセルを開けることにした。当時21世紀を夢見た少年少女たちは大人になり仕事と家庭を持っていた。

当時天才少年とみんなに言われたがメガネと運動音痴から「のび太」と呼ばれた高橋はリストラ寸前で家族にも言えない。「ジャイアン」こと安西は仕事をいくつも変わりうまくいかず、その妻は同じクラスでみんなのマドンナ的存在だった。二人の夫婦関係は崩壊寸前、娘2人は冷めた目で見ている。5年の1学期で転校した杉本は肝機能障害で何年も入退院を繰り返している。知的障害の池田はノウテンキでみんなを和ませる。そしてみんなを冷めた目で見ていた淳子。40歳を目前に悩みは色々とあった。

タイムカプセルを提案した担任の先生は、みんなの卒業後間もなくダブル不倫の末に惨殺される。タイムカプセルから出てきた先生の手紙「あなたたちはいま、幸せですか?」と書いてあった。なんか奥が深いよなあ。

少年少女の頃は未来があった。21世紀は夢のような世界だった。40歳を過ぎたら黄昏(トワイライト)なのだろうか。小説では再度タイムカプセルを埋めようとする。みんな何を埋めようか困る。さらに10年後の「未来」を夢見ることができない。そして、そのもっと先は「未来」ではなく「老後」なのだ。

何年前だったっけ「小学3年3組同窓会」をやったのは…。新卒だった担任の先生は還暦を迎え定年退職されていた。

当時どんな未来を夢見ていたのだろう。もう50を越してしまった…。

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