上野日記

自分が主人公の小さな物語

重松清の『カカシの夏休み』を読んだ

重松清の『カカシの夏休み』を読んだ。2000年に文藝春秋より刊行された、中編小説集だ。「カカシの夏休み」「ライオン先生」「未来」が収録されている。第123回(2000年上半期)直木三十五賞の候補作となった。「ライオン先生」は、竹中直人主演でドラマ化(2003年日本テレビ)されているらしい。


カカシの夏休み:主人公は小学校の男性教師で37歳、児童たちからは陰で「カカシ」と呼ばれていた。見ているだけ、注意しない、と。教室では授業を妨害する児童にてこずる。子供の頃、ダムに沈んだ村に帰りたいと考え始める。また同級生の交通事故死を22年ぶりに連絡の取れた友達から連絡を受け、葬式で再会する。水不足でダムの貯水率が低下している、あの村にみんな行ってみないかと誘う。「ノスタルジー禁止」、でもあの頃に帰りたい…。みんないろんな悩みを抱えて働いている。

ライオン先生:主人公は高校の男性教師で44歳。髪の毛がライオンのたてがみのようでライオン先生と呼ばれて、生徒に好かれる熱血教師だ。「ライオン先生」と名付けたのは妻だった。新任の時の高校の教え子で卒業と同時に結婚、娘を生むもすぐに癌で他界した。ただ、今の熱血教師になるまでには一苦労あった。生徒からは軽んじられたり、空回りしたりと。その苦労が頭を薄くさせ、現在は「かつら」をかぶっている。20歳になった娘は、瞼を二重にする整形手術をしたいというが、妻の面影が残ったその目を変えてほしくない。「お父さんがかつらを取ったら諦める」と交換条件を出す。でも今さらできない。ところが急に頭がかゆくなる症状が出始める。かつらメーカで検査してもらっても異常はない。授業中、不登校の生徒の家庭訪問中、無性に頭がかゆくなる。本来の自分を隠しているという後ろめたさがあるのか…。

未来:主人公は19歳の女性。高1の時同級生の少年から「今から死ぬ」という電話に対し「じゃあ死ねば?」と答えその少年が自殺した。クラスメイトからは「お前が殺した」となじられ、学校に行けなくなり退学した。今も体調を崩しており、笑えない、泣けないと悩みながらボランティア活動を続ける。そんな折、弟の同級生がいじめで自殺をした。弟の名を書いた遺書が残されていた。マスコミや周りから非難を受ける。自殺した同級生とは誕生日が同じだった。生きていれば彼にも未来はあった。そして自分にも違った未来があったはずだ。

教育・自殺・いじめがテーマの小説だった。重松清流かな。「人生」という意味でも、ちょっと考えさせられた。

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