上野日記

自分が主人公の小さな物語

西村賢太の『暗渠の宿』を読んだ

西村賢太の『暗渠の宿』を読んだ。2006年に新潮社より刊行され、2007年に第29回野間文芸新人賞を受賞した私小説だ。本書は2010年の文庫本だ。「けがれなき酒のへど」と「暗渠の宿」が収録されている。

先日『苦役列車』を読んで他の作品も読んでみようかなと思い古本屋を探していたら見つけた本だ。
恋人としての女性のぬくもりが欲しくて一生懸命にソープランドの女性を口説くがやっぱり騙されるという自虐ネタの「けがれなき酒のへど」。ようやく見つけた恋人と同棲しアパートを見つけるが暴言・殴る蹴るの暴力的な本性が出てしまう「暗渠の宿」。短気で我儘で自己中心的そして小心者な主人公、酒の力を借りないと言いたいことも言えない。ま、これほどではないにしても、自分と重ね合わせて読んでしまう私がいた。実に面白い。

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