上野日記

自分が主人公の小さな物語

北林一光の『ファントム・ピークス』を読んだ

北林一光の『ファントム・ピークス』を読んだ。2007年に角川書店より刊行された小説で、本書は文庫本(初版2010年)だ。朝日新聞の「売れている本」で紹介されていたので、知らない作者だったが読んでみいと思い図書館に予約した。

山に茸狩りに出かけた妻が行方不明になり、半年後彼女の頭蓋骨が不明となった場所から遠く離れて発見された。何があったのか。妻がそんな遠くに行くはずはない。そして、山で写真を撮っていた女子大生や娘を連れた主婦が行方不明となる。幼い娘は恐怖のあまり口がきけなくなった。単なる行方不明ではなく、山に何か〈怪物〉が潜んでいる。
読みだしはそれほど面白くなさそうな感じがした。謎を残しつつ読者の想像をくすぐる。ただ、山の情景描写や登場人物の心理状態等が詳細にそして巧みな文章で綴られていて、次第に引き込まれる。後半からは「パニック・エンタテインメント」というだけあって、恐怖や人々のパニックの描写がこちらに伝わってくるような感じに夢中になり、一気に読んでしまった。そして、題名の「ファントム」の意味は……。

ネットで「北林一光」を検索してもあまり情報がない。Wikipediaにも記載されていない作家だ。1961年生まれなので私よりひとつ年下だが、2006年に癌を患い45歳の若さで他界したそうだ。きっともっと書きたかったに違いない。ご冥福をお祈りします。

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