上野日記

自分が主人公の小さな物語

伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』を読んだ

伊坂幸太郎の『ラッシュライフ』を読んだ。2002年に新潮ミステリー倶楽部、2005年に文庫本が新潮文庫より刊行された長編小説で、2009年には堺雅人寺島しのぶ出演で映画が公開された(今話題の塩谷瞬が特別出演している)。東京芸術大学の映像研究科生たちが映像化したらしいが、この複雑な話をどのように仕上げたのか観てみたい。


物語は5つの視点で展開する。「強欲な画廊と新人女性画家」、「空き巣専門の泥棒」、「父が自殺し新興宗教の教祖に惹かれる青年」、「それぞれの伴侶の殺害を計画する不倫カップル」、「年下の上司にリストラされ失業中の中年男性」の話がパラレルに進む。ただ、それぞれの人物が意外なところで結びついたり、出会ったり、影響し合ったりしながら話が次第に絡み合っていく。なかなか面白い。
登場人物の中の一人が以下のようなことを話す。

一生は日々の積み重ねだろう。人生がリレーだったらいいと思わないかい?
 私の好きだった絵にそういうものがあってね。『つなぐ』という題名だった。それを観て思ったんだ。一生のうち一日だけが自分の担当で、その日は自分が主役になる。そうして翌日には、別の人間が主役を務める。そうだったら愉快だな、と。
 昨日は私達が主役で、今日は私の妻が主役。その次は別の人間が主役。そんなふうに繋がっていけば面白いと思わないか。リレーのように続いていけばいいと思ないか? 人生は一瞬だが、永遠に続く。

この小説の登場人物たちには色々な(非日常的な)事件が起こり、その日は特別な日だったのかもしれない。
ほとんどの人が平凡に暮らしているが、自分の人生で一日だけ主役になれる日があればそれだけでも十分なのかもしれない。少し意味合いは違うが、さだまさしが歌った『主人公』を思い出してしまった。

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