上野日記

自分が主人公の小さな物語

藤原和博の『坂の上の坂』を読んだ

藤原和博の『坂の上の坂』をよんだ。2011年にポプラ社より刊行されたビジネス書(自己啓発)だ。本書は新聞広告で知り、副題の「55歳までにやっておきたい55のこと」に惹かれて読むことにした。読んだことはないが司馬遼太郎の『坂の上の雲』がNHKでドラマ化され、それが好きだったことも読もうと思った動機のひとつだ。

序章、第一章「世の中を信じる」、第二章「幸せは自分の中にある」、第三章「“いい子”は、もうやめる」、第四章「会社を利用し尽くす」、第五章「消費の作法」、第六章「コミュニティをシフトする」、第七章「パートナーと向き合う」、第八章「死とお金を考える」、第九章「本当に必要な備えをする」に55の話が記載されている。
本書を図書館から借りてきて「はじめに」を読むまで、藤原和博氏がどういう人か全く知らなかった。だが、東京都内の義務教育での初の民間校長を務めた人だと知り、以前ニュース等で見かけたことを思い出した。書籍もたくさん書いているのもプロフィールを読んで初めて知ったほどだ。


明治の頃は、人々の視線の先にはロマンがあり夢があった。自分の目の前の坂の上には見上げる「雲」があった、と作者は始める。現代は平均寿命も延び、60歳から65歳でリタイヤしてもそこからまだ何十年も生きていかなくてはいけない。坂の上には「雲」ではなくさらに「坂」がある、と続ける。その坂を上るためには55歳までに準備をしておかなければならない、と。

以下に印象に残った言葉を引用した。前後の話がないとちょっと分かりづらいが、読んでいてなるほどと思った箇所だ。

五十代からの“三十年間”をどう過ごすか。イメージしたことは、おありでしょうか。今を惰性のように進めたところで、乗り切れるかどうか。私は、「坂の上の坂」を上るには、そのための準備が、新たな心構えが必要な気がしてなりません。

私は、必ず味方が現れる、と信じて戦うことを決めました。大義があれば、できるだけ無謀なことをやってみる。その戦いが無謀であればあるほど、応援してくれる人が現れるものです。世の中捨てたもんじゃない。

私は自分にとって極めて大事な選択は、人に相談しないことに決めています。もし相談相手の意見通りに決断をしてしまったとしたらどうなるか。他者に説得された、ということを心の中で言い訳にしてしまいかねません。自分の決断を、誰かの、何かの責任でできてしまう。これほど失礼な生き方はないのではないでしょうか。

お金の発生しないことをするなんて、そんな余裕はない、忙しい、と感じる人もいるかもしれません。しかし、忙しいと思ってやらない人は、一生、忙しいままです。自分にとって、何ら新たなチャレンジをすることもなく終わってしまう可能性もあります。それでは、あまりにも残念な人生ではないでしょうか。

(相手に印象を残すにはたとえばマイナスの話をする。人間は自慢話を聴くとつい受け流してしまう)でも、マイナスの話は気になって、ついつい耳を傾けてしまう傾向があります。何かのコンプレックスを持っている、どうしてもこういうことができない、こういう失敗をした、これが嫌い、これは苦手、と言われた方が印象に残るのです。にもかかわらず、人間は年をとるとなかなかそれができなくなっています。妙なプライドが邪魔をして、自慢話をしたがります。しかし、絶対に認識しておくべきなのは、目の前にいる人たちは自慢話などまったく聞きたくないということ。自慢話は印象を悪くするだけです。(“聴く”と“聞く”は原文のまま)

まぁ、たしかになるほどと思った話もあったので、実践してみたいとは思うのだが、やはり踏ん切りがつかない。もう少し若い頃に読むような本だったかもしれない。

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