上野日記

自分が主人公の小さな物語

東野圭吾の『変身』を読んだ

東野圭吾の『変身』を読んだ。1991年に講談社より刊行された長編小説で、本書は1994年発行の文庫本だ。2005年には玉木宏蒼井優出演による映画が公開されている。

不動産屋で部屋を探しに来た主人公は、そこで強盗に拳銃で頭を撃たれる右脳を損傷する。運ばれた病院で世界初の成人脳移植の手術に成功し、見事に生還し普通の生活に戻ることができた。ただ、温和だった性格が日に日に凶暴になり、趣味や嗜好も変わっていくのが自分にも周りの人にも分かってくる。
手術をした医者に相談しても、何も問題ない正常だと白を切る。何か秘密がある。もしかしたら、移植された脳の持ち主に起因するのではないかと思い、本当のドナーを探そうとする。そして意外な人物に辿り着く。
脳移植により、過去の思い出や記憶が無機質な古い情報となり、自分の残してきた足跡を振り返っても自分のものではない、本人の人生が書き変わることになる。
献身的な彼女の気持ちを考えると最後は少し切なくなったが、二人とも幸せだったのかもしれない。

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