上野日記

自分が主人公の小さな物語

池井戸潤の『オレたち花のバブル組』を読んだ

池井戸潤の『オレたち花のバブル組』を読んだ。2008年に文藝春秋から刊行され、第22回山本周五郎賞候補になった金融小説だ。

本書は、オレバブシリーズの第2弾だ。第1弾の『オレたちバブル入行組』を先に読むつもりでいたが、たまたま図書館で見つけ、これを逃したら次はいつになるかわからないので即借りてきた。調べたら同じ主人公の完全な続編だった。ま、いいか。第3弾の『ロスジェネの逆襲』は来春刊行予定らしい。
バブル期に大手銀行に入行した<半沢>が主人公で現在の肩書は次長だ。ある日突然、巨額損失を出した老舗ホテルの再建を無理やり押し付けられる。ホテル社長からのたっての願いだと知り、一緒に頑張ろうと励ます。そんな折、金融庁の検査が入ることになる。ホテル再建計画に問題ありと指摘されると立て直しが難しくなる。また銀行からの融資は不良債権となり金融庁から業務改善命令が出るかもしれない。同期の<近藤>は出向先でいびられ、こちらも融資で悩む。<半沢>は支店の不正融資や情報隠蔽の情報とその追求に挑む。金融庁との戦い、社内の派閥争いに巻き込まれながら、ピンチをどう切り抜けるか必死で考える。なかなか痛快である。

主人公<半沢>の流儀は「基本は性善説。しかし、やられたら倍返し――」だ。不正や裏切りが分かると、とことん相手を追い詰める。ま、ちょっとできすぎじゃないのと思いながらも話の展開に引き込まれていった。

最後に以下のような文章があった。

人生は一度しかない。
 たとえどんな理由で組織に振り回されようと、人生は一度しかない。
 ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。前を見よう。歩き出せ。
 どこかに解決策はあるはずだ。
 それを信じて進め。それが人生だ。

主人公のように何事にも負けない前向きな性格ならば良いが、見習うところはあるのかもしれない。

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