上野日記

自分が主人公の小さな物語

池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』を読んだ

池井戸潤の『空飛ぶタイヤ』を読んだ。2006年に実業之日本社から刊行され、2007年に吉川英治文学新人賞候補および第136回直木三十五賞候補になった長編経済小説だ。2009年にはWOWOW仲村トオル主演によるドラマが放送されたらしい。

本小説は、2002年に発生した三菱自動車のトラック脱輪死傷事故および三菱自動車リコール隠しがモチーフとなっている。
亡き父親のあとを継いだ運送会社の社長が主人公だ。その会社のトラックのタイヤが脱輪し、歩いていた母子を直撃する。子どもはかすり傷だったが母親は即死だった。トラックの製造会社からは「整備不良」とされ、警察からは業務上過失致死による家宅捜査される。大手取引先からは取引を断られ、銀行からは融資を断られ、遺族からは裁判を起こされ、会社は倒産寸前だ。小学校のPTA会長も務める主人公は、モンスターペアレントから執拗な抗議を受け、子どもはいじめにあう。会社の整備は万全だったので整備不良はおかしい。となるとトラックの構造上の欠陥しかないと考え主人公は地道な調査を始める。相手は大財閥の流れをくむ大企業、こちらは中小企業、雑魚呼ばわりをされながらも、会社をそして社員を守るため、家族の名誉を守るため、遺族の無念を晴らすため、必死で頑張る。

主人公を見捨てなかったのは彼の「誠実さ」だったのだろう。心が折れそうになった時は父親の言葉を思い出す、「親はいつまでも生きていない。困ったときに頼れるのは友達だぞ。だから友達はたくさん作れ。そして大事にしろ」と。そして、古参の専務、妻、子どもたちの言葉も力を与えたようだ。それにしても泣けた…。

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