上野日記

自分が主人公の小さな物語

三浦しをんの『星間商事株式会社社史編纂室』を読んだ

三浦しをんの『星間商事株式会社社史編纂室』を読んだ。2009年に筑摩書房から刊行された長編小説だ。

29歳で独身の女性、趣味は同人誌に小説を書くこと。高校からの友達と毎回コミケに出展している。いわゆる、オタク・腐女子に分類される。そんなある日、自社(星間商事)の60年の社史を作る部署社史編纂室に異動となった。資料を調査したり、会社OBに取材をしたりすると1950年後半から1960年前半について誰も語ろうとしない空白があることが分かった。あやしい。その謎「高度経済成長期の穴」を探るために調査を始めると脅迫状が届いたり、会社の上層部から圧力がかかったりする。さて、謎はつきとめられるのか……。
高校からのオタク仲間の他の二人は結婚し子どももいたり彼氏からプロポーズもされたりしているが、自分の彼はバイトで金がたまると数カ月もどこかに放浪の旅に出かける。編纂室の上司や同僚はやる気がないのか一向に仕事が進まない。と、それぞれの人間関係や結婚・仕事・趣味の悩みが絡まって話が進展していく。


あの三浦しをんだからと思い借りてきた。初めて読んだ『私が語りはじめた彼は』や『まほろ駅前多田便利軒』がなかなか面白かったからだ。1/3程度読んでもあまり面白くなかったので読むのをやめようかと思っていたら「謎」が出てきて、それを探るところからちょっとおもしろくなってきた。親友のことや彼氏のことで悩む女心もうまく描かれていたと思うが、今一だったかな。


仕事をしながら趣味も一生懸命やるのは共感した。私自身も30歳半ばぐらいの時、仕事は忙しく、帰宅はいつも10時11時を過ぎていた。それからプログラミング・バグ修正やコミュニティとの情報交換をやったりすると夜中をとうに過ぎているということが何日もあった。自分が作成したプログラムが世の中に使われていることに充実感を覚えた。この本の主人公がコミケで小説を売りいくばくかの反応があるとうれしいと言っていたことがとてもよくわかった。

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