上野日記

自分が主人公の小さな物語

吉田修一の『初恋温泉』を読んだ

吉田修一の『初恋温泉』を読んだ。2006年に集英社より刊行された短編集で、それぞれ温泉を舞台にした「初恋温泉」、「白雪温泉」、「ためらいの湯」、「風来温泉」、「純情温泉」が収録されている。

妻に別れ話を切り出され戸惑う夫の熱海。婚約したばかりのおしゃべりなカップルの隣は無口なカップルだった青森・青荷温泉。不倫旅行の夫に意味深な妻からの電話で戸惑う京都。一人で訪れた温泉で一人の女性と出会うがそのとき妻は…の那須。高校生カップルの初めての温泉旅行の阿蘇・黒川。
それぞれのカップルがそれぞれの悩みや日常の問題を抱えている。正面から向き合うか、避けて通るかは人それぞれだ。人里離れた温泉がふと気づかせてくれるのかもしれないし、ちょっと切なくもあった。


最後に温泉に行ったのっていつだったろうか。会社の課の旅行だったか、会社の熱海の研修所だったか、少なくとも10年は温泉に行ったことがないような気がする。ぷらーっと行ってみようかなと思わせる小説だった。

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