上野日記

自分が主人公の小さな物語

重松清の『星に願いを ―さつき断景―』を読んだ

重松清の『星に願いを ―さつき断景―』を読んだ。2000年に祥伝社より『さつき断景』として刊行され、2004年に文庫化、そして2008年に新潮社より文庫本が刊行される時に「さつき断景」は副題となり『星に願いを ―さつき断景―』に改題された。

1995年から2000年の6年間の日常が描かれている。各年の時期はいずれもゴールデンウィークだ。主人公は、高校1年のタカユキ、30代前半のヤマグチさん、定年を間近に控えたアサダ氏の3人だ。3人の日常はパラレルに時代時代の事件や芸能・スポーツニュースと共に語られる。
タカユキは、阪神淡路大震災の復興ボランティアに参加した。何故参加したかは気まぐれからだった。将来の進路は決まっていないし、高校も中退してもいいと思っていたがそれもできなかった。ヤマグチさんは、通勤でたまたまいつもより1本早い電車に乗った。いつも乗る電車だったら地下鉄サリン事件に巻き込まれていたかもしれない。それからしばらくして地下鉄には怖くて乗れないようになってしまった。アサダ氏は、娘の結婚式の朝を迎えていた。

タカユキは少しずつ大人になっていく。ヤマグチさんは事件での心の傷(PTSD)は和らいだものの、無邪気だった小1の娘はちょっとだけ大人になり会話もままならないのが悩みだ。妻の助け船が必要だ。アサダ氏は、定年を迎えたが妻に先立たれちょっと老けこむ。でも娘と初孫、就職したばかりの息子は自分のことを心配していてくれる。世の中には嫌な事件がいっぱいあるが、大切なものを身近に感じていた世紀末だったかもしれない。


それぞれの世代にはそれぞれの悩みや辛いこと嫌なことがある。ただ、そんなことばかりではない。自分で決断しなければならないこともあるだろうが、人の助けをありがたく受けることもある。それが自分の物語なのかもしれない。

© 2002-2017 Shuichi Ueno