上野日記

自分が主人公の小さな物語

鉢呂とハチロー

“鉢呂”と言えば今「死の町」という失言や報道陣に「放射能をつけた」というような発言で最近お茶の間を騒がせている鉢呂吉雄経済産業相だ。民主党内部からも辞任論が浮上しているが、当の本人は10日「全力を挙げて原発事故の収束に今後も頑張っていきたい」と記者団に述べ、続投する意向を示したらしい。新任早々調子にのった言葉で辞任を迫られる政治家の言葉の重みを今頃かみしめているのかもしれない。野党は野党でここぞとばかりに追い打ちをかけ、鉢呂経産相の自発的辞任か首相による罷免と任命責任も追及するらしい。「放射能をつけた」に関しては、録音も残っていないし聞いた記者も少ないのだろうか、記憶にないと白を切るらしい。いずれにしても、また国会の審議は止まるし復興もその分遅れることになりかねない。どうしたもんだろうか。

では、“ハチロー”は誰かと言うと、詩人・童謡作詞家・作家のサトウハチロー(1903-1973)だ。童謡に「ちいさい秋みつけた」 「かわいいかくれんぼ」 「うれしいひなまつり」、歌謡曲に「リンゴの唄」 「長崎の鐘」 「うちの女房にゃ髭がある」等多数ある。童謡は誰もが一度は歌ったことがあるのではないだろうか。

ハチローの弟・節は、1945年8月6日広島の原爆で被爆死している。弟の親友が広島中央放送局へ転勤するのを見送ったが、別れがたくそのまま大阪駅から転勤先の広島までついて行ってしまったそうだ。ハチローは弟を広島に探しに行き宿屋跡は見つけたが遺骨も遺品も何も見つけることは出来なかった。

ハチローは原爆で破壊された広島の町をみて何と思っただろうか。やはり「死の町」と思っただろうか……。

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