上野日記

自分が主人公の小さな物語

川上弘美の『溺レる』を読んだ

川上弘美の『溺レる』を読んだ。1999年に文藝春秋より刊行され、2000年に第11回伊藤整文学賞と第39回女流文学賞をW受賞した短編小説集だ。「さやさは」、「溺レる」、「亀が鳴く」、「可哀相」、「七面鳥が」、「百年」、「神虫」、「無明」が収録されている。

何かの本を読んだ時(『ららら科學の子』だったかもしれない)、その本の最後にこの本の宣伝がありW受賞とあったので読んでみようと思ったのがこの本を借りた切っ掛けだった。
最初の「さやさや」を読み終わった時、うーんなんかよくわからん話だよなと思ったのが第一印象だ。それほど親しくない男性と蝦蛄(シャコ)を食いに行き、酔っぱらうは、終電はなくなるは、雨がさやさやと降り出すは、小便をしたくなり草むらでスカートをめくりさやさやと音を立てて葉を濡らす。後で考えるとこれが恋の始まりだったのか。そして、「溺レる」では駆け落ちをしてそして愛に溺れていく二人が描かれている。「亀が鳴く」では、カメを置いて男が出ていく話。「可哀相」は
七面鳥が」は40歳の恋。「百年」は不倫で駆け落ちして情死(心中)したが男性だけが助かり女性は100年もさまよい続け男性の往生を見届けるがそれでもさまよい続ける話。「神虫」は、男二人と女性一人の微妙な関係。「無明」は500年も生きている不死身な夫婦の話。

「男女の恋」とか「大人の恋」とかが描かれているのだろうが、個人的にはあまり好みの小説ではなかった。『センセイの鞄』のような話は好きだけど……。

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