上野日記

自分が主人公の小さな物語

村上春樹の『東京奇譚集』を読んだ

村上春樹の『東京奇譚集』を読んだ。2005年新潮社より刊行された、短編小説集だ。「偶然の旅人(2005年『新潮』3月号)」、「ハナレイ・ベイ(2005年『新潮』4月号)」、「どこであれそれが見つかりそうな場所で(2005年『新潮』5月号)」、「日々移動する腎臓のかたちをした石(2005年『新潮』6月号)」、「品川猿(書き下ろし)」の5篇からなる。

いずれも不思議な小説だった。「偶然の旅人」:偶然に出会った女性を見て連絡を断っていた姉を思い出させる話、その姉は……。「ハナレイ・ベイ」:ハワイでサメに殺された息子が10年後に……、「どこであれそれが――」:失踪した夫の原因は何だったのか、と謎が残った、「日々移動する――」:不思議な女性に小説のヒントを貰う話、「品川猿」:自分の名前を忘れる原因が猿だったなんて……。と、なんとも不思議な話だったが、とても面白かった。
不思議な話だけど、過去に読んだ小説よりは現実味があった。でも、猿がしゃべっちゃねぇ……、SFかファンタジーだろと笑ってしまった。ただ、その「猿」は現実のものではなく、彼女(主人公)の心の中、子どもの頃からの鬱積した「嫉妬」が創りだしたものだったのだろう。彼女の心の奥の言葉を代弁してくれたのだろう。

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