上野日記

自分が主人公の小さな物語

「クラウドネットワークシンポジウム2011」に行ってきた

クラウドネットワークシンポジウム2011 〜『クラウドサービスを支える高信頼・省電力ネットワーク制御技術の研究開発』の可能性〜」に行ってきた。


開催目的(Webより):
 クラウドコンピューティング情報通信分野におけるグローバル規模でのパラダイムシフトが起きる中、政府や企業等はクラウドコンピューティング技術を活用したサービスを本格的に導入するケースが増えてきている。
 また、公共分野など社会インフラとしてのクラウド採用の動きも広まりつつあり、信頼性のみならず、環境に配慮した基盤づくりが急がれている。
 これらの時代を背景に、2010年度の総務省委託研究において、高品質・高信頼であり、かつ省電力を実現する「クラウドサービスを支える高信頼・省電力ネットワーク制御技術の研究開発」を進めてきた。
 本シンポジウムでは、本研究開発の成果を広く認知させるとともに、産学官で構成するグローバルクラウド基盤技術連携フォーラム(GICTF)の協力により、基調講演では北米のCloud.com社 CEO and Founder Sheng Liang 氏を招待し、委託研究各社による研究発表、有識者によるパネルディスカッションを行う。

朝から雨、そして霙から雪に変わるとても寒い一日になった。会場は品川だったけど、行くのをためらうほどだった。ま、とりあえずおもしろそうなので、重い腰を上げることにした。


開会挨拶

総務省 総合通信基盤局長 桜井 俊 氏

ICTの中心はクラウドになってきている。現状をみると、米企業を中心に大きなデータセンタを構築しているので、我が国も大きなポジションを確立したい。

今年度は無事予算を確保できた、来年度の予算確保はこの成果発表会にかかっている。

クラウドコンピューティングはいかにして企業のIT基盤となるか

Cloud.com CEO and Founder Sheng Liang 氏


講演概要(Webより):
 「クラウドコンピューティング」の潮流により、企業ITシステムでは、最も重要なパラダイムシフトを迎えている。今、企業は、クラウドを「導入すべきか/せざるべきか」という議論に時間を費やすのではなく「クラウドを『いつ』『どのように』導入するか」という導入に向けて具体的な議論をすべき時期に来ている。
 本講演では、クラウドへの最適な移行方法や、API管理やリソース管理やハードウェア構成等のクラウド環境のあり方、また、移行の際に企業の IT部門が陥りやすい注意点等について解説する。

  • Data Centers will become Clouds:Mainframe → Internet Data Center → Clouds
  • Looking Closer a an IaaS Cloud
  • Where are the Data Centers?:Amazon, Managed Service Providers, Enterprise Private Cloud →2011年はエキサイティングな年になる
  • Infrastructure as a Service is the Foundation:インフラをいかに移行するかが鍵になる
  • Why will Enterprise Adopt Cloud?
  • From Legacy to Cloud
  • Software Transforms Data Center to Cloud:Key Attributes of a Cloud:
    • API access
    • Hardware independence ハードウェアの独立性。メーカーに依存してはいけない
    • Dramatically reduced cost
  • Cloud Management Enables Federation
  • 5 Predictions for Future Data Centers
  1. There will be fewer Cisco Certified Network Professionals
  2. Managed Service Providers will build more data Centers than the enterprise
  3. Mega hardware vendors will enable every type of infrastructure including IaaS
  4. Open source software powers the cloud
  5. Data centers become power plants


<質疑応答>

  • ライトスケール以外に連携するソリューションはあるか?→たくさんある。
  • クラウドのアプリケーションは今後どうなると思われるか?→今回の話はインフラだった。IaaSが迅速に動いている。これはアプリを変更する必要がないから。クラウドがどのように動作するかを理解するとその下で動くアプリをどのように変えれば効率がいいかがわかってくる。チューニングすることにより、より安価なハードを使うことができる。
  • (質問の意味が分からなかったので、答えもよくわからなかった)

高信頼クラウドサービス制御基盤技術の研究開発

日本電信電話株式会社 サイバースペース研究所
所長 後藤 厚宏 氏


講演概要(Webより):
 社会基盤としてクラウドサービスを利活用するためには、その利点を活かしながら高信頼化を実現する必要がある。過剰負荷や障害発生時に、多種多様なサービスや利用者の要求に応じながら、複数のクラウドネットワークを柔軟かつ最適に連携させることにより、信頼性の高いサービス基盤を実現する研究開発動向について紹介する。

  • 研究開発の背景:既存のクラウドサービスでは、サービスの安全性・信頼性や情報流出に対する懸念がある。今後、企業の基幹業務や社会インフラとしていくためには、「案税制、信頼性の向上」と……
  • 高信頼クラウドサービス制御基盤技術が目指す世界
  • クラウドリソース要件解析技術:サービス品質要件を満たすために必要なクラウドのリソースを推定
  • H22年度成果:AP特性計測ツール Pantau:実験用クラウド環境を整備し、その上にAP……
  • クラウド間リソース融通技術:階層的リソース制御技術、異種クラウド間リソース再構成などの要素技術を開発し、リソース割り当てで、1000VMで10秒、小規模実験で、スケールアウト5分、ディザスタリカバリ20分……
  • サーバとネットワークの連携が必要な例
  • 階層的リソース制御によるスケールアウトの動き
  • クラウド連携マネージャによるスケールアウト制御
  • クラウド連携マネージャによるディザスタリカバリ制御
  • スケールアウトと連携したネットワークの制御
  • ヘテロジーニアスクラウド間連携:異なるクラウド事業者間(ヘテロジーニアスクラウド)での連携
  • ネットワークリソース動的プロビジョニング
  • ネットワーク自律最適制御・ノード再構成技術:クラウドサービスの信頼性(安定・確実なサービス稼働の維持)という期待に対して、クラウドシステムの過剰負荷や障害発生に……
  • ネットワーク自律最適制御技術:情報収集・配信
  • フローベース・メッセージ配信技術の概要:配信経路を最適化する
  • 動的再構成ネットワークノード技術
  • 広域分散協調型ネットワークノード技術
  • NW自律最適制御・ノード再構成技術の成果と今後の活動
  • リアルタイム分散処理の狙い:高応答/高信頼な情報処理により安心・安全、省エネルギーで快適な……
  • リアルタイム分散処理技術の概要
  • リアルタイム分散処理技術のH22年度成果:インテリジェントノード試作機
  • リアルタイム分散処理技術も適用例(デモ展示):顔認証による入退出管理

<まとめ>:複数クラウド間の連携によって社会インフラに必要な更新等クラウドの実現を目指す。H22年度は、試作機開発をとおし、成果目標の達成見込みを検証した。GICTFと連携して、クラウド連携技術を世界に情報発信と海外標準化団体と積極的な交流、およびITU-TFGへの……

<質疑応答>

クラウドネットワークシステムにおける省エネルギー制御

株式会社日立製作所 ネットワークソリューション事業部
主管 高瀬 晶彦 氏


講演(Webより):
 クラウドサービスの進化・拡大に向けて、エネルギー効率改善はキーであり、省電力データセンタ等多数の取り組みがある。さらなる効率化のためには、広域ネットワークも含めクラウドを構成するリソースを連係させることにより、システムとしての省エネルギー化が必要となってくる。本講演では、クラウドシステム全体にわたる省エネルギー化のための、ダイナミックなリソース管理とサービスルーティングについて概説する。

  • 日立、富士通、慶応大学の連合チーム
  • クラウドシステムの省電力化:現状の取り組み:サブシステム毎のエネルギー効率改善。データセンタと広域ネットワークが関連したさらなる省電力化
  • データセンタ・広域ネットワーク連携:稼働状況に応じたシステムのダイナミック再構成
  • 研究開発プロジェクトの狙いと課題:クラウドシステム省電力化のためのシステム制御技術の開発。コンピューティング・ネットワーキング連携システム制御。各種クラウドリソースの使用状況を適応した構成度システム制御。各種クラウドリソースの冗長度を排除する事による省電力化
  • 基本的な課題:コンピューティングとネットワーキングとの差異
  • 課題の構造とプロジェクト体制
  • システム分散
  • リソース連携:集中管理と分散処理。クラウドシステムリソースを集中管理。分散処理:各リソース間で状態を交換
  • リソースマネジメント技術:ネットワークリソース配置の無駄削減。ネットワーク全体で省電力化
  • 省電力ネットワーク設計技術:消費電力量を最小限に押さえる最適なネットワークを統合的に……
  • 省電力ネットワーク運用技術:トラヒック変化に応じて省電力機能の効果最大化できるように、かつフロー品質を保証する最適なトラヒック転送経路を導出……
  • リソース連携シグナリング技術:余剰サーバリソース、ネットワークリソースを削減し、ICTシステム全体で省電力化
  • 広域ワークロード移行向けにキャパシティ管理技術
  • トラヒック追従型・・・
  • リソース配置最適化基本評価結果
  • 自己組織化省エネルギーネットワーク技術概要:トラヒック量変動に応じて、ネットワークを自律最適化
  • 自己組織化省エネルギーネットワーク技術実装
  • 省電力処理のためのサービスルーティング技術:処理プログラムをIPアドレスとして仮想化。処理プログラムの地図を作り、経路を検索。
  • 省電力処理サービスルーティング技術
  • SLAを保証した省電力サーバ動的再配置基盤:SLAを保証した省電力サーバ動的再配置基盤の実現が目的。

<まとめ>

  • 研究プロジェクトの狙い:サブシステム毎省電力化→トータルシステム制御によるさらなる省電力化。広域ネットワークとデータセンタが連携した省電力化
  • 課題:コンピューティング・ネットワーキング連携。クラウドリソース使用状況モニタ
  • 制御、リソース配置:信頼性と省電力のトレードオフ、システム制御コスト
  • 開発技術:メトロ・コアネットワークリソース管理による省電力ルーティング技術。アクセス・データセンタのクラウドリソースモニタ
  • 今後の課題:多様なユースケースに対する適用、方式拡張の検討。事業者のシステム管理・運用実体からのフィードバック取り込み。

グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF)の取組み

グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTF)会長
慶應義塾大学 教授 青山 友紀 氏


  • 知的財産戦略本部 国際標準化戦略より:我が国のクラウド事業者は米国等の外国クラウド事業者に比べて小規模であり、コスト競争力では太刀打ちできない。「最先端のグリーンクラウド基盤構築にむけた研究…」…世界に先駆けて、複数のクラウドを自由に連携させたような行動サービスを提供する技術を開発
  • 社会基盤としてのクラウド実現に向けて
    • 様々なサービスの品質要件にこたえなければならない(稼働率、レイテンシ、…)
    • 省電力化が高信頼化の犠牲になってはいけない(CO2削減は社会の要請)
    • 有事においてもライフラインサービス提供を確保しなければならない

→"単一クラウド"で解決できるか?すべてを満たすことができるか?複数のクラウドの連携="インタークラウド"に解決に向けた道がある

  • グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICTFとは?):インタークラウドユースケースとそれに必要な機能の明確か、インタークラウド技術に関する支援、講演やセミナーとの啓発活動。各種標準化団体、オープンソースソフト団体との連携、国際標準化に向けた活動
  • GICTFがインタークラウドで目指す世界:クラウドサービスが要求する品質を監視し、要求条件を満たせなくなる状況を検知したさいは、複数クラウド間にまたがって自律的にサーバとネットワークが連携してクラウドリソースを再構成することにより、効率よくサービス品質を維持……
  • 会員数は設立2年で110団体になった
  • 技術部会活動:インタークラウドで必要される技術要件
  • GICTFホワイトペーパーが公開されている:応用部会での活動について:技術部会で作成したホワイトペーパーにあるインタークラウド技術のユースケースを元に、ユーザニーズを把握し、ビジネスへ展開する差異の課題等を……

にとりこむ・・・

  • ネットワーク仮想化とインタークラウド:"進化する"ネットワーク仮想化:ネットワークをネットワーク資源だけではなく、コンピュータ資源やストレージ資源も含む資源全体を交換するICTインフラとおさえ、階層ネットワークを構築し、多様なネットワーク(スライス)を収容する新世代ネットワークの基盤技術……
  • インタークラウドテストベッドの必要性
  • 日本のクラウド戦略案
    • 現在のビジネス用シングルクラウドは米国が圧倒的に先行しており、日本はミッションクリティカルなクラウドおよび近い将来に必要なインタークラウドに重点を置く。
  • ジャパン・クラウド・コンソーシアムが設立された

日本のクラウドガラパゴスにさせないために

コーディネータ
日本電気株式会社 システムプラットフォーム研究所 所長 加納 敏行 氏
パネリスト
グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム(GICFT)会長
慶應義塾大学 教授 青山 友紀 氏
楽天株式会社 技術理事 吉岡 弘隆 氏
株式会社インターネットイニシアティブ サービス本部
プラットフォームサービス部 部長 立久井 正和 氏
竹中パートナーズ株式会社 バイスプレジデント(ロサンゼルス)
テクノロジーグループ 鈴木 逸平 氏
NTTコミュニケーションズ株式会社 ITマネジメントサービス事業部
サーバマネジメントサービス部 担当部長 栗原 秀樹 氏


  • 「つなぐクラウドへの取り込み」:NTT-C栗原氏

エンタープライズプライベートクラウドソリューション:ハイブリッドクラウドの提供、シームレス・クラウドマネジメントの実現

  • 竹中パートナーズ鈴木氏

クラウドの本質的な価値:4つの原則:1.短時間でシステムを構築(Agility) 2.安くシステムを構築(Cost) 3.必要なだけ使う(Scalability) 4.ユーザ主導
クラウドの進歩:クラウド環境の成長:仮想環境(仮装マシンを手動で管理)→クラウドAPI(仮装マシン管理の自動管理)→クラウドGUI(仮想環境自動化の管理コンソール)→クラウドアプリ環境(統合型クラウドアプリ稼働/管理環境)

IIJ GIOはIaaS中心のサービスが多い。IIJ GIOホスティングパッケージサービス。サーバ1台133円/日(4000円/月)〜
島根県・松江にデータセンタを建設中(4月完成予定)。ITモジュール(コンテナ)を簡単に増設できる。データセンタのコスト40%以上削減が目標。

楽天の説明。日に40億円の流通なので、サーバがダウンすると損失が多い。

  • 青山教授

税金を使って研究開発している。

<意見>

  • 立久井氏:現状をみると日本ではガラパゴス化しようがない。利用者からAmazonなどの他社と比較され、これが足りないとか言われる。それより、たち遅れしない(生き残る)ようにしなければならない。独自の進化も必要かもしれない。
  • 栗原氏:どのようにして付加価値をつけていくか考える必要がある。
  • 吉岡:(楽天グローバル化でサービスを海外に進展している、というコーディネータの前置きを踏まえ):自信をなくしているのではないか。日本には優秀なエンジニアはいる。企業の壁、国の壁を乗り越えて、技術交流をやれるはず。
  • 鈴木氏:クラウドは標準化が遅れている市場である。開発の仕方が変わってきた。コミュニティ中心で開発する。そしてその上にものを作っていくアグリゲーターが乱立している。ユーザに近いアプリを開発していくことが必要である。
  • 青山氏:今回のフォーラムで2つ抜けている。<学術的な話>:各大学としてどのようなクラウドを作っていくかというニーズ。サイエンスをやっている人は、各国が大量のデータを持っている。そのようなデータをクラウド化する必要がある。<政府・行政・自治体の話>:これを日本自身が考えていく必要がある。でもガラパゴスになってはいけない。

<質疑応答>

  • NEC社員の質問:楽天は自前で作っているがどこまで太刀打ちできるか。→EC/銀行業務は規制があるので、外に持っていくのは難しい。経営判断で外に出すこともできる。金銭的なもの。コスト等いろんな判断になる。中国など海外は現地データセンタを設置している。ケースバイケースの判断になる。
  • 青山教授の質問:どのような組み合わせか?→IaaSとして提供し、・・・・。そういうのはスタンダード化できるのか。→サービスバズやゲートウェイのようなものを作ると可能性はあるかもしれない。(質問の意図もよくわからなかったので、回答もよくわからなかった)

<最後に>ユーザ主導、コミュニティの中で作っていく。メンバーが競争しながら作っていく世界に向けていく。企業の壁を越えて、インフォーマルな連携も必要だと思う。

© 2002-2024 Shuichi Ueno