上野日記

自分が主人公の小さな物語

遠藤周作の『海と毒薬』を読んだ

遠藤周作の『海と毒薬』を読んだ。太平洋戦争中に米軍捕虜の生体解剖事件を題材にし、1958年に発表された小説だ。

正確には「読み返した」だ。学生の頃、同じ学科の友達から勧められて読んだ……と思う。たぶん、読んだはず……、記憶が……。……と、いうことで読んでみた。
戦時中のこととは言え、生体解剖とはむごい。五木寛之のエッセイを読んでもわかるのだが、戦時中の「闇」の部分はあまり知られていないのかもしれない。中国や韓国の反日感情はこんなところから来るのかもしれない。「日本人の行動原理とクリスチャンの行動原理の決定的な相違がある事」を描いている。

五木寛之氏のエッセイで、日本人は神を信じない(無宗教の)人が多いことを不思議に思う外国人が多いという話があった。神を信じない人は信用できない、どこで悪さをしているかわからないからだと。どこかで神様が見ているというだけで罪を抑制できるのだ。ただ、日本人の場合は「お天道様が見ている」という言葉があるように、神を信じないからといって一概には言えないという反論もある。お天道様も太陽神と考えられるで、神様なのだが……。

本書の解説で佐伯彰一氏も続編を望んでいた。遠藤周作も続編(第2部)の執筆を示唆していたらしい。それを断念したのは、事件の関係者からの抗議が無関係ではなかったのではないかと考えられているそうだ。それが本当なら残念だ。

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